2015 Fiscal Year Annual Research Report
単波長パルス光の非視覚作用に及ぼす錐体の影響に関する生理人類学的研究
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26291098
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
勝浦 哲夫 千葉大学, 工学(系)研究科(研究院), 名誉教授 (00038986)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
下村 義弘 千葉大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60323432)
李 スミン 千葉大学, 環境健康フィールド科学センター, 助教 (90600429)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 生理人類学 / 単波長パルス光 / 非視覚作用 / 内因性光感受性網膜神経節細胞 / 錐体 |
Outline of Annual Research Achievements |
色覚正常な20歳代の男女10名が十分な説明と同意の上で実験に参加した。光照射装置として,発光ダイオード(LED)を内部に設置した積分球を用いた。背景光には白色LED,刺激光には青色LED(ピーク波長465 nm),緑色LED(535 nm),赤色LED(630 nm)を光源として用いた。各色LEDを組み合わせることでS,M,L錐体をそれぞれ比較的強く刺激する条件と,S,M,L条件を組み合わせて照射する条件(同時照射条件:S+M,S+L条件)を設定した。背景光は常時点灯し,Task1および3においてはパルス幅2.5 msのパルス光,Task2においては70 sの定常光を用いた。被験者は背景光下で10分間の明順応後,Task1,Task2においては瞳孔径を測定した。その後,Task3において誘発反応記録装置を用いて網膜電図の測定を行った。実験条件の実験順序はカウンターバランスをとった。 Task1において最大縮瞳率と75%回復時間には,同時照射条件と単独照射条件の間に有意差は認められなかったが,Task2においては,L条件とS+L条件の縮瞳回復率がS条件より有意に大きかった。その他の指標では同時照射条件と単独照射条件の間に有意差は見られなかった。Task3において得られた網膜電図のa波の振幅は同時照射条件において単独照射よりも有意に大きくなった。b波の振幅は同時照射条件において単独照射よりも有意に大きくなった。 本研究のTask1,Task3においては,瞳孔反応に見られる青色パルス光に緑色パルス光や赤色パルス光の劣加法的な作用は確認されなかったが,Task2において,S+L条件にてS条件よりも有意に速く縮瞳が回復したことから,青色光と赤色光照射による劣加法性が確認された。 以上より,縮瞳などの非視覚作用にS錐体,M錐体,L錐体への入力が関与している可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
昨年度から本年度に掛けて,光刺激装置の積分球および制御回路を改良し,さらに実験精度を上げることができた。また,網膜電図を皮膚電極によって非侵襲的に測定する手法を確立することが出来た点も本研究課題の達成ための重要な成果である。本研究は,単波長パルス光を用いて瞳孔径,網膜電図,視覚誘発電位などの生理反応を測定し,非視覚作用に及ぼす錐体の影響を視細胞レベル,大脳皮質レベルから検討するという世界でも例のない極めて独創的なものである。本年度の研究成果として,青色光によってもたらされる縮瞳などの非視覚作用が赤色光の同時照射によっても抑制されるという光の劣加法性を明らかにしたことは当初の計画以上の進展であると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度も本年度に引き続き,各種単波長パルス光を用いて単独照射,同時照射時の瞳孔径,網膜電図,視覚誘発電位などの生理反応と,VAS法による主観評価などを実施する予定である。さらに来年度は,広帯域光から特定の波長を除去した光刺激の作用の検討や,単波長光の波長幅をより狭めるなどによる光刺激制御回路のさらなる改良,瞳孔径測定装置の改善により実験精度を高めること,研究成果を国際会議等や論文として発表することを計画している。
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Causes of Carryover |
本年度は,研究成果を国際会議1回と国内学会2回で発表したが,論文発表がなかったことからその他(論文掲載料)の支出を抑えることができたこと,データ解析等の資料整理補助にかかわる謝金が学生の協力により本研究補助金を使用しなかったことなどにより,支出を抑えることができた。なお,研究成果は十分に挙げることができた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
来年度は,研究成果を発表するために複数の国際会議に参加する予定であり,旅費の支出が増加する見込みである。また,研究成果を論文として発表するために論文掲載料が相当額見込まれる。さらに来年度は本研究のさらなる推進のために特任研究員を雇うことを計画しており人件費・謝金の支出も増加する見込みである。
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Research Products
(3 results)