2015 Fiscal Year Annual Research Report
ホウレンソウ性決定遺伝子座の構造決定および進化過程の解明
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26292001
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
小野寺 康之 北海道大学, (連合)農学研究科(研究院), 講師 (80374619)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
近江戸 伸子 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 教授 (30343263)
星野 洋一郎 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 准教授 (50301875)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ホウレンソウ / 雌雄異株 / 間性 / 性決定遺伝子 |
Outline of Annual Research Achievements |
ホウレンソウはアカザ科の雌雄異株作物として知られるが,実際には雄株および雌株の他に間性株(雌雄同株)も見られる.これまでの研究から,雄決定遺伝子(Y)と間性遺伝子(M)は,約10 cMの距離をおいて性染色体上で連鎖している.まず,アカザ科の両性作物テンサイのゲノム配列情報を利用して,ホウレンソウの性染色体および性決定遺伝子周辺のゲノム情報を整備した.その結果,ホウレンソウ性染色体は,テンサイの第4および第9染色体と広範なシンテニーの保存性を示すことが判明した.両者のシンテニー保存性に基づいて,ホウレンソウM遺伝子のコード候補領域をおよそ20 kbpまで絞り込んだ.一方,減数分裂期の相同組み換えが抑制されているY遺伝子周辺領域は,テンサイの第4および第9染色体のセントロメア周辺領域とシンテニーの保存性を示すことが分かった.Y遺伝子周辺領域に高度に蓄積しているレトロエレメント(SpRE1およびSpRE2)は,ホウレンソウの全ての染色体(2n = 12)のセントロメア周辺に蓄積していることが分かった.以上のデータに基づいて,ホウレンソウY遺伝子はセントロメア近傍に座乗している可能性が高いことが判明した.次に,雌雄異株系統03-009のRNAseq解析のデータを活用して,雄特異的領域(相同組み換えが完全に抑制されたY遺伝子を含む領域)に座乗している遺伝子(non-coding RNA転写領域も含む)を同定(現時点で15個)することに成功した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の大きな目標の一つである間性遺伝子(M)の座乗領域を,およそ20 kbpまで絞り込んだことは,大きな成果として評価したい.しかし,セントロメアに近接し,組み換えが抑制された領域(雄特異的領域)に座乗しているY遺伝子に関しては,有力な候補遺伝子を同定するには至らなかった.その一方で,雄特異的領域に座乗する遺伝子を15個同定しており,今後の解析に向けた足がかりが得られた.
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Strategy for Future Research Activity |
間性遺伝子(M)コード配列の同定に向けた取り組み:予備調査によって,Mコード候補領域(約20 Kbp)には,4個のタンパク質コード遺伝子(M候補遺伝子)が含まれていることが予測された.今後は,雌株(系統03-009)および間性株(系統03-336)におけるMコード候補領域(約20 Kbp)のDNA配列を決定し,当該領域のDNA多型に注目してM候補遺伝子の絞り込みを試みる.さらに,4個のM候補遺伝子の発現解析も行い,そのデータも絞り込みに活かす予定である.最終的に,絞り込まれたM候補遺伝子をホウレンソウ雌株およびシロイヌナズナ(col-0)へ導入し,当該遺伝子の機能評価を行う.Y候補遺伝子の探索:雄特異的領域に座乗する遺伝子(non-coding RNA転写領域も含む)(現時点で15個)の配列情報を用いて,Y特異的領域をカバーするBACコンティグの構築を試みる.次いで,コンティグの全長配列決定を行い,Y特異的領域に座乗する遺伝子群を明らかにする.これらの遺伝子群から,発現パターンおよび既知の花成遺伝子群との相同性に基づいて,Y候補遺伝子の絞り込みを行う.さらに,雄特異的領域に座乗する遺伝子をプローブに用いたFISH解析を行い,当該領域とセントロメアの物理的な位置関係の検証を行う.
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Causes of Carryover |
当初,情報解析について民間業者へ委託することを計画していたが,共同研究者の協力を得ることによって委託解析費(その他)を減らすことができたため。さらに,テンサイのゲノム情報を活用することによって,当初の見込みよりも効率的にマッピング解析を遂行できたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
ホウレンソウのゲノム解析および遺伝子発現解析にかかる費用(消耗品費)並びに次世代シーケンサーの委託解析費用(その他)などに充てる予定.さらに,研究補助員への謝金、研究報告旅費および投稿論文校閲費にも研究費を充てることを予定している
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Research Products
(3 results)