2015 Fiscal Year Annual Research Report
世界のイネコアコレクションからハイブリッドライス育種重要形質の分子遺伝学的抽出
Project/Area Number |
26292002
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
鳥山 欽哉 東北大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (20183882)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 育種学 / 遺伝学 / 遺伝子 / ゲノム / 植物 |
Outline of Annual Research Achievements |
F1ハイブリッドライスの育種に使われる雄性不稔性細胞質の多様化とF1採種効率の良い育種母本を育成するための分子基盤を構築することを目的とした。農業生物資源ジーンバンクNIASコアコレクション世界のイネ(WRC)69品種を材料とし、ハイブリッドライスを育種するための重要形質として、細胞質雄性不稔性のミトコンドリアを保有するのかの調査、および、柱頭露出性等の花器形質について調査した。 1. 細胞質雄性不稔性:WRCの各系統に台中65号(T65)の戻し交雑を行うことで核置換系統を作出し、CMSの形質が現れるかどうかを調査した。 WRC20, WRC27, WRC36は既報のCMS関連遺伝子が存在しないが、BC6F1とBC7F1はすべて雄性不稔性を示したので、新規の細胞質雄性不稔性の可能性が高いことを明らかにした。WRC23はBC4F1とBC5F1世代でも不稔の個体と可稔の個体が分離して出現したため、CMSではなく、核遺伝子支配のドミナントな雄性不稔性の可能性も考えられた。WRC07, WRC45, WRC48, WRC49からは雄性不稔性を示さないことがわかった。WRC41はCMS原因遺伝子をして知られているorf79を保持している。稔性回復遺伝子のマッピングを行ったところRf2遺伝子座を含む第2染色体にマッピングされた。 2. 柱頭露出性:柱頭露出率が60%を越す品種としてWRC45を見出した。WRC45とT65のF2を作出し、QTL解析を行ったところ、柱頭露出率のQTLを第4染色体と第8染色体に検出した。WRC45はjaponica 品種と同じ短粒種に属するため, japonica 品種への柱頭露出性の供与親として有用であると考えられた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
細胞質雄性不稔性について新規CMSの候補と3系統、新規RFを持つ系統候補を1系統選抜することができ、当初の計画通り進展した。ドミナントな雄性不稔遺伝子候補を見つけたことは、当初の期待を上回る成果である。柱頭露出性等の花器形質について柱頭露出率を高める新規のQTLを見出した。このため、当初の計画以上に進展していると判断される。
|
Strategy for Future Research Activity |
新規の細胞質雄性不稔性候補系統について、ミトコンドリア遺伝子について解析し、CMS原因遺伝子を明らかにする。また、原品種は稔性回復遺伝子を持つと期待されるので、WRC系統xT65の稔性が見られた初期世代にT65を戻し交雑し、稔性回復遺伝子を保持するNILを作成しながら稔性回復遺伝子を明らかにする。WRC23はCMSではなくて、核遺伝子支配のドミナントな雄性不稔性の可能性も考えられたため、これを遺伝学的に証明し、その遺伝子のマッピングを行い、DNAマーカーを明らかにして、イネの循環選抜育種への応用を検討する。柱頭露出率に関しては、見出したQTLに注目し、T65の戻し交雑を進め、染色体断片部分置換系統を作出するとともに、柱頭露出率を高める遺伝子のマッピングを推進する。
|
Causes of Carryover |
WRC41由来の稔性回復遺伝子、WRC23由来の核遺伝子支配のドミナントな雄性不稔性遺伝子、WRC45由来の柱頭露出率を高める遺伝子のマッピングが当初計画以上に進んだ。これらの遺伝子、および、WRC20, WRC27, WRC36の新規CMS系統にあると予測されるミトコンドリアの新規CMS関連遺伝子を明らかにするため、次世代シークエンサーを利用した解析が有効と考え、さらに解析を進めてから、次年度に次世代シークエンサーを利用した解析を行うこととしたため。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
稔性回復遺伝子、ドミナントな雄性不稔性遺伝子、柱頭露出率を高める遺伝子、および、ミトコンドリアの新規CMS関連遺伝子を明らかにするため、次世代シークエンサーを利用した解析に使用予定
|
Research Products
(8 results)