2014 Fiscal Year Annual Research Report
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26292003
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
掛田 克行 三重大学, 生物資源学研究科, 教授 (50221867)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小松田 隆夫 独立行政法人農業生物資源研究所, 作物ゲノム研究ユニット, 上級研究員 (60370657)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 自家不和合性 |
Outline of Annual Research Achievements |
オオムギ近縁野生種Hordeum bulbosumにおいて、花粉と雌ずいのトランスクリプトーム比較解析を行うことで、花粉側S遺伝子候補のスクリーニングを試みた。雌ずいおよび花粉のトランスクリプトームデータから得られた計48,589個のコンティグのうち、花粉特異的コンティグとして11,924個が選抜された。このうち、Sハプロタイプ特異的コンティグとして1,553個(S1特異的632個、S3特異的921個)が選抜され、これらを予測コードタンパク質別にみると、トランスポゾン様配列を除き、874種類にグループ化された。 花粉側S遺伝子候補のスクリーニングには、まず花粉のS1およびS3特異的コンティグのうち、それぞれリード比上位50番以内のコンティグを対象として推定アミノ酸配列の比較解析を行った。これら100個のコンティグのうち、S1、S3ハプロタイプ間で相同なコンティグが15種類(計30コンティグ)認められた。その他70個のコンティグのうち、41個は他方のSハプロタイプのリード比50番目以降に相同なコンティグが存在し、残りの29個は一つのSハプロタイプに特異的であった。これらリード比上位のコンティグの予測タンパク質の中には、タンパク質間相互作用ドメインを含む膜アンカー型タンパク質や種々のレセプター様プロテインキナーゼなど、自家不和合性認識反応への関与が期待されるものが見出された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、雌性S決定因子(HPS10)の同定に続き、オオムギ野生種の花粉側(雄性)S遺伝子の単離・同定を達成し、雌雄S決定因子間の自他(ハプロタイプ特異的)認識機構を明らかにすることを目的としている。本年度実施した花粉と雌ずいの比較トランスクリプトーム解析から、Sハプロタイプ特異的な花粉発現遺伝子(コンティグ)をリスト化でき、この中には有望な花粉側S遺伝子候補が含まれていると予測される。 第二の研究目的として、オオムギ野生種で同定されたS遺伝子が他のイネ科自家不和合性種においてもS決定因子の要件を満たすかどうかの検証がある。この点に関しては、雌ずい側S遺伝子HPS10のオルソログをライムギおよびイタリアンライグラスからPCR増幅することができており、オオムギ野生種以外における検証が可能な状況に進みつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に単離した花粉側S遺伝子候補のうち、花粉特異的発現パターンおよびSハプロタイプ間での高度な配列多型性が確認されたものについて、S遺伝子マッピング用の分離集団を用いて連鎖解析を行う。ここでS遺伝子座との完全連鎖が認められた遺伝子を花粉側S遺伝子の最終候補とし、以下の機能証明実験に供する。 雌性S因子の証明に用いたin vitroバイオアッセイ法の応用して、花粉側S候補遺伝子の多型領域からアンチセンスオリゴヌクレオチドまたはペプチドを合成して花粉発芽培地に添加し、in vitro花粉発芽に対するSハプロタイプ特異的な効果があるかどうかを検証する。さらに生体緩照射による花粉側和合性変異体の種子が得られれば、植物体の育成を進める。 次に、オオムギ、コムギ、ライムギおよびライグラスのcDNAおよびゲノムDNAからHPS10オルソログをPCR増幅し、遺伝子配列の多型性および発現特異性に関して、自家和合性と不和合性の種間で差異があるかどうかを調査する。
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Causes of Carryover |
主に研究補助(人件費)や受託解析費(その他)を使用しなかったため、当初予算よりも少ない執行額となった。これにより、H26年度の計画に支障が生じたことはない。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
H27年度は、遺伝子解析などで新たに使用する物品費や受託解析費が増えることが見込まれるので、これらに繰り越した経費を充てる予定である。
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Research Products
(6 results)