2014 Fiscal Year Annual Research Report
ポストハーベストステイグリーンの分子基盤と新しい育種利用
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26292006
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
草場 信 広島大学, 理学研究科, 教授 (20370653)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 老化 / 植物ホルモン / 光受容体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は葉菜類が流通中に暗黒条件下に置かれることによって老化が進行してしまうメカニズムの解析を進めた。輸送中の老化進行が品質上大変問題になっているブロッコリと同じアブラナ科であるシロイヌナズナを主な解析材料とした。シロイヌナズナではエチレン非感受性突然変異体が暗黒処理時も老化の進行が非常に遅いことから、暗黒誘導性老化にエチレンが重要な役割を果たしていると考えられている。しかし、暗黒処理により実際にエチレンが合成されているという報告はなかった。シロイヌナズナの葉を暗黒処理したところ、明条件下ではエチレン合成の上昇は見られないが、暗黒処理時には処理1-2日目にエチレン合成の誘導が起こることを見出した。 bHLH型転写因子Phytochrome Interacting Factor5(PIF5)のloss-of-function突然変異体は暗黒条件下で老化が遅延することから、暗黒誘導性老化の正の制御因子と考えられる。PIF5は転写アクティベータ―であることから、直接遺伝子発現を制御するとされる遺伝子のうち、老化で誘導される遺伝子を探索したところ、AtHB2を見出した。その発現パターンは単に老化で誘導されるとされる遺伝子とは異なり、老化処理により一過的に発現が誘導されていた。発現が上昇した後に再び低下するのはPIF5に直接制御される遺伝子の発現の特徴でもある。実際、pif5突然変異体では暗黒処理時の発現が低下していた。 また、植物のゲノム編集技術についても老化関連遺伝子を標的とした改変を試みている。当初計画通りTALENによる葉緑体ゲノム編集を試みたが、核ゲノム遺伝子のゲノム編集に関しては、並行して簡便なゲノム編集技術として注目を集めているCRISPR/Cas9の適用を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
老化誘導に関与するPIF5の直接標的遺伝子の候補を同定するなど、およそ目標にしていた内容については達成した。暗黒処理時のエチレン合成の誘導の発見など、予定外の結果も得ている。
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Strategy for Future Research Activity |
老化誘導に関与するPIF5の直接標的遺伝子の候補として同定されたAtHB2の機能解析を行っていく。AtHB2は多重遺伝子族を形成すること、初期発生に関与することから完全な機能喪失体を得ることを難しいと考えられることから、過剰発現体の機能解析を中心に進めていくことにする。核ゲノム編集についてはCRISPR/Cas9を中心に進めていく。
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Causes of Carryover |
TALENを中心にゲノム編集を行っていく予定であったが、新たに有効性が示されて来たCRISPR/Cas9によりゲノム編集を行っていくことにした。CRISPR/Cas9は外注等により作成する必要が無いため、予算執行額が少なくなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
一方、暗黒誘導性老化におけるエチレンの重要性が見出されたため、今後の解析にはエチレン合成量の測定が必須となった。エチレン量の測定は外注で行っているため、年間90万円程度の経費が新たに掛かると考えられる。
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