2015 Fiscal Year Annual Research Report
ゲノム解読を基盤とする高等植物ミトコンドリアゲノムの包括的研究
Project/Area Number |
26292007
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
寺地 徹 京都産業大学, 総合生命科学部, 教授 (90202192)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山岸 博 京都産業大学, 総合生命科学部, 教授 (10210345)
山本 真紀 関西福祉科学大学, 保健医療学部, 教授 (60240123)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ミトコンドリアゲノム / コムギ / ダイコン / 次世代シークエンシング / 分子コーミング |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、ダイコンとその近縁種、ならびにパンコムギとその近縁種という2つの異なる分類群に属する多くの植物種についてミトコンドリアゲノムの解読を行ない、分子コーミングの手法を用いたファイバーFISHなどの方法でmtDNAを視覚化するなどいくつかの方法を組み合わせて、ミトコンドリアのゲノム構造を決定することを目的とする。またゲノム上に同定される多数の新規オープンリーディングフレーム(ORF)のいくつかについて、その機能を探ることも目的としている。今年度は、昨年度からの実験を継続して進め、大阪四十日、クロダイコン、青長ダイコンのダイコン3種類のゲノム解読を終えることができた。現在、結果を論文にまとめつつある。また、ダイコンに雄性不稔をもたらすアブラナ科の近縁種、Brassica maurorum, B. fruticulosa, B. oxyrrhinaの3種ミトコンドリアゲノムについても、細胞質置換ダイコンあるいは野生種そのものを材料に用いて実験を行ない、ゲノム解読に必要な次世代シークエンシングのデータを取得した。一方、コムギの近縁種については、Triticum monococcum, T. speltaのミトコンドリアゲノムの解読をほぼ終えた。さらに、ライムギ、オオムギへと材料の範囲を拡げ、両種についてもゲノム解読の終了が間近かであり、現在、遺伝子のアノテーションなどデータを精査している。 ORFの発現解析については、ダイコンとB. maurorumのミトコンドリアゲノムの比較から、orf117, orf214, orf223, orf257およびorf310に注目し、大腸菌における発現系を構築した。その結果、orf117の発現が大腸菌の生育に悪影響を及ぼすことがわかり、雄性不稔の原因遺伝子としての可能性が議論された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は多くの植物種について、ミトコンドリアのゲノム配列を決定し、分子コーミングの手法を取り入れたファイバーFISHやlong-PCRなど他の実験の結果と合わせて、ゲノムの分子構造を決定しようとするものである。費用が最もかかり、また以後の実験の基礎となる、次世代シークエンサーによる各植物からの塩基配列データの取得が順調に進んでいるので、研究は概ね順調に進んでいると判断している。ただ、これまで実験に用いてきた次世代シークエンサー(ロシュ社の454)が開発中止となるという予定外の事態も生じている。454は、データがロングリードであり、作られるコンティグも少数にまとまる場合が多かったことから、植物のミトコンドリアゲノムに固有の複雑なマスターサークル構造を推定するのに大いに威力を発揮してきた。しかし今後、454を用いて実験を進めることが困難なので、代替のシークエンサーを検討せざるを得ない。現在はイルミナ社のMiSeq、PacBio社のPacBioRSII、サーモフィッシャーサイエンティフィック社のIonPGMを試用している段階である。
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Strategy for Future Research Activity |
次世代シークエンシングは、ほぼ予定どおり完了した。今後は、そこから見出された新規orfの機能解析に注力したい。直近では、大腸菌あるいは葉緑体によるミトコンドリアのORFの発現解析を予定している。 分子コーミングの手法を取り入れたファイバーFISHは、mtDNAを視覚化する全く新しい試みであり、現在、mtDNAのファイバーと思われる蛍光を観察することはできている。しかし、別色の蛍光で標識したプローブをファイバー上で検出するには至っていない。今後は実験方法を改良し、適当なプローブを選定、検出することで、組み換え型分子の存在を視覚的に証明できるようにしたい。
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Causes of Carryover |
さまざまな要因(共同研究をする、試用させてもらうなど)で、次世代シークエンシングの費用を抑えることができた。また、植物材料の調製にかかわる人件費が予想より安かった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
ゲノム配列への遺伝子アノテーションなど、単純であるがゲノム解読のためには大事な作業を行ってもらうために、主にアルバイトの人件費として使用する予定である。
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Research Products
(8 results)