2015 Fiscal Year Annual Research Report
C4植物に特異的なアブシジン酸応答性葉緑体凝集運動の生理的役割と分子機構の解明
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26292011
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
谷口 光隆 名古屋大学, 生命農学研究科, 教授 (40231419)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | C4植物 / エノコログサ / 葉緑体 / 凝集運動 / 環境ストレス / アブシジン酸 / 青色光 / スクリーニング |
Outline of Annual Research Achievements |
重イオンビームを照射して突然変異を誘発させたエノコログサ後代種子の増幅を引き続き行った。マイクロプレート内で葉片を青色光・ABA処理後,光学顕微鏡により向軸側から葉緑体の配置を観察し,画像解析自動化マクロを用いて一度に多系統の植物を解析するスクリーニング系を前年度確立し,この系を用いた変異体ライブラリのスクリーニングを行った。さらに,完全展開した第1葉も利用できることを確認し,より迅速なスクリーニングができるようになった。観察した変異系統の中で,凝集運動の程度が弱い個体が見出された。青色光・ABA処理時間を延長することで十分な凝集運動が観察できたことから,葉緑体運動の開始に関わるシグナル伝達や葉緑体運動系に何らかの障害が起きていると考えられた。 暗処理や細胞成熟過程における葉肉葉緑体の細胞内配置を観察した。暗所で発芽・生育させたシコクビエの黄化実生では,環境ストレスを与えずとも葉肉葉緑体が凝集配置をとっていることが判明した。また,成熟葉を2日以上暗所に放置すると,分散配置していた葉肉葉緑体が凝集配置をとり,もう一度植物を明所に戻すと葉肉葉緑体の凝集配置が解除され,8時間程で通常の分散配置に戻った。次に,展開伸長途中のシコクビエの葉身について基部から先端部まで段階的に葉肉葉緑体の細胞内配置を観察した。その結果,下位葉に包まれ光に直接当たっていない部位は,葉肉細胞の成熟に伴い葉肉葉緑体の凝集配置が強まる一方,光が直接当たる抽出以後の部位では分散配置へと変化していくことが見出された。したがって,葉肉葉緑体の凝集配置は,激しい環境ストレスでのみ誘導されるストレス応答機構という捉え方のみでなく,暗条件あるいは発生初期でも起こる現象であり,むしろ非ストレス明所下では葉緑体を分散させる機構が働いているという視点ももつ必要があることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
スクリーニングを順次行っているが,明白に凝集運動を起こさない変異体は見出されていない。引き続きスクリーニングを行うとともに,更なるスクリーニング系の改良が必要である。
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Strategy for Future Research Activity |
スクリーニングに供する変異種子ライブラリーの増幅を平成28年度も行う。スクリーニングを引き続き行い,凝集運動変異体の単離を目指す。また,各植物体の葉観察画像をデータベース化し,他の形質(葉細胞の形態,クランツ構造,維管束間距離,葉緑体の数や配置など)に変異があるかどうかも調べる。 C3植物で葉緑体光定位運動に関わるchup1やkacの発現が低下したエノコログサ形質転換体を作製する。次いで,形質転換体における青色光とABAに応答した葉肉葉緑体の凝集運動の程度を調べ,これらの運動関連因子が葉肉葉緑体凝集運動に関与しているかを明らかにするとともに,凝集運動の生理的意義解明を目指す。 明・暗条件や細胞成熟過程における葉肉葉緑体の凝集配置・分散配置の誘導機構ならびに生理的意義を明らかにする。
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Causes of Carryover |
遺伝子組換え体の作製・選抜に手間取り,組換え体発現解析で使用する試薬の購入が滞ったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度分に繰り越した予算に関しては,遺伝子発現解析用の試薬購入に充てる予定である。
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Research Products
(5 results)