2017 Fiscal Year Annual Research Report
メロン遺伝資源を活用した日持ち性に関する分子生物学的解析
Project/Area Number |
26292018
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
中野 龍平 岡山大学, 環境生命科学研究科, 准教授 (70294444)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
加藤 鎌司 岡山大学, 環境生命科学研究科, 教授 (40161096)
村上 賢治 石川県立大学, 生物資源環境学部, 教授 (40200266)
高居 恵愛 石川県立大学, 生物資源環境学部, 准教授 (70589770)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | メロン / 軟化 / エチレン / 細胞壁分解関連因子 / 転写因子 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、申請グループが保有するメロン遺伝資源を活用し、メロン全ゲノムや次世代シークエンサーによる解析手法と組合せた、日持ち性に関する研究を目的とし、本年度には以下の結果が得られた。
1)B2メロンが持つ日持ち性の向上に関わる遺伝的変異の探索:外生エチレン処理しても、軟化は誘導されず、日持ち性が良いB2関して、通常のメロン春系3号とRNA-seq解析による発現比較を行ったところ、春系3号ではエチレンに応答して発現増加する多数の細胞壁分解関連遺伝子の内、B2ではCm-PG1とCm-Exp5の発現が増加しないことが明らかとなった。また、B2と春系3号のF1世代に関して、エチレン感受性に関連する複数因子の遺伝様式を調査した結果、B2では軟化と離層発達に関してエチレン感受性が欠損していること、これらの形質は優性であることが示された。 2)ハミウリ持つ日持ち性向上因子の探索:ハミウリとシャランテの交配後代について、棚持ち性の良い系統を選抜しつつ、シャランテへの戻し交雑を実施し、BC5F2世代において、自己触媒的エチレン誘導および軟化とも抑制されている系統とエチレン誘導は起こるにも関わらず軟化抑制されている2種類の日持ち性の良い系統を選抜し、網羅的遺伝子解析による日持ち性遺伝子の同定に向けて、遺伝的バックグランドがシャランテに近く、日持ち性の良い集団が得られた。 3)ハネデューが持つ日持ち性向上因子の分子生物学的解析:自己触媒的エチレン誘導が抑制されたために、日持ち性が良いハネデューメロンに関して、ハネデューと日持ち性は良いが機構の異なるB2、日持ち性の悪いシャランテと春系3号に関して、RNA-seq解析による複合的な比較を試みた結果、エチレンシグナル因子Cm-ETR2、転写因子のCm-NAC87などB2とハネデュー間でも発現様式の異なるいくつかのシグナル関連因子が見つかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
メロン遺伝資源を活用した、日持ち性に関連する因子の探索を進めているが、以下のように、それぞれ異なった性質に起因する系統およびそれらの網羅的解析が進んでおり、おおむね当初の計画通りに進んでいる。 1)B2メロンはエチレン応答して自己触媒的なエチレン生成は誘導されるものの、軟化誘導されないこと、この原因としてCm-PG1とCm-Exp5の発現抑制が関連していることが明らかとなっている。また、この表現型が優性であることが明らかとなっているが、他の果実も含めて、エチレン応答性の欠損が優性ある変異は珍しく、新規な発見に至っている。 2)ハミウリはエチレン応答性の欠陥により、自己触媒的エチレン生成、外生エチレン応答性の軟化とも欠損していると考えていたが、シャランテの交配後代の戻し交雑により、自己触媒的エチレン生成と軟化とも抑制されている系統と、軟化のみ抑制されている系統が見出され、複数の遺伝的要素を保持していたことが分かった。また、それぞれ遺伝的バックグランドがシャランテに近く、日持ち性の良い集団が獲得できている。 3)ハネデューは自己触媒的エチレン誘導が抑制されたために、日持ち性が良く、外生エチレンには反応して軟化というように、B2とは反対のエチレン応答性を示す。ハネデュー、B2、シャランテ、春系3号に関して、複合的な比較を試みた結果、ハネデューとB2間でも発現様式の異なるいくつかのシグナル関連因子が見つかっている。 以上のように、それぞれ異なった要因により日持ち性の良いメロン系統が見つかっており、日持ち性の悪い系統も含めて、それぞれの網羅的解析ができており、関連する候補遺伝子の発見に至っている。今後、交配後代の解析や、統合的な解析を進めることにより、自己触媒的エチレン生合成やエチレン応答性軟化に関連する因子の特定が期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに得られた成果の中で、特に、新規性の高いB2メロンの棚持ち性に関連する要因の精査およびB2メロンとハニデューメロンの統合的解析に焦点を絞り、研究期間の延長と新規分担者の加入により、以下の研究を実施する。 1)B2メロンの棚持ち性に関連する要因の精査:エチレン感受性の低下のために棚持ち性に優れることを証明したB2メロンにおいて、細胞壁分解に関わるCm-PG1とCm-Exp5、エチレンシグナル伝達に関わるCm-ETR2、転写因子のCm-NAC87などの関与を示唆するデータが得られた。また、エチレン感受性の低下は優性であることが示唆されている。この精査を実施するために、春系3号との交配F1世代のエチレン応答性に関して、反復数を増やして調査するとともに、F3世代における形質の分離と、上記候補遺伝子の発現の共分離の有無に関して調査する。 2)日持ち性の良いメロン系統のシークエンスデータの統合解析:B2メロン、ハニーデューメロンとも日持ち性は良いがB2メロンは外生エチレンによる軟化の誘導がなく、自己触媒的エチレン生成は示す。一方、ハニーデューメロンは自己触媒的エチレン生成能が欠損しており、外生エチレンには反応して軟化するというように、エチレンに対する応答性が異なっており、それぞれにつながるシグナル要因の解析に最適である。B2メロン、ハニーデューメロンと、日持ち性の悪い春3メロン、シャランテメロンに関して、RNA-seq解析の結果より、B2メロン、ハニーデューメロン間で、シグナル因子に関してそれぞれに特徴的な発現パターンや配列パターンがあることが見出されている。そこで、これらのデータの精査および既報の解析データなどとの統合解析により、それぞれの系統に 特有の日持ち性に関連する因子の抽出を試みる。
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Causes of Carryover |
ハミウリとシャランの交配後代について戻し交雑を繰り返して作成し日持ち性の良い系統の網羅的解析を計画していたが、B2メロンの特徴(自己触媒的エチレン生成能を保持しながらも外生エチレンに反応しない。その表現型が優性である。)が他の果実においても報告のない新規性が高いものであることが明らかとなり、そのさらなる解析に注力、継続して論文としてまとめる必要が生じた。 そこで、バイオインフォマテック解析に優れ、既報のデータを含めた統合解析に精通している分担者を新規に加え、研究期間を延長し、これまでに得られているデータ(B2 メロンでは、細胞壁分解に関わるCm-PG1とCm-Exp5の発現がエチレンに応答して増大しない。エチレンシグナル伝達に関わるCm-ETR2や転写因子のCm-NAC87などシグナル因子の発現様式がB2とハニデュー間において異なる)の精査、B2メロンと春系3号のF3世代の解析、B2メロンとハニデューメロンのシークエンスデータの統合解析に使用することを計画している。
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