2014 Fiscal Year Annual Research Report
いもち病菌のホストジャンプ機構とコムギ特異的菌群の全進化過程の解明
Project/Area Number |
26292025
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
土佐 幸雄 神戸大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (20172158)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | いもち病菌 / コムギ / 非病原力遺伝子 / 抵抗性遺伝子 / 遺伝子対遺伝子 / ホストジャンプ |
Outline of Annual Research Achievements |
シコクビエ菌MZ5-1-6とコムギ菌Br48を交雑して得たF1菌系を、コムギ品種農林4号(N4)、Chinese Spring (CS), Hopeに接種したところ、非病原性菌系:病原性菌系がN4, CSの上では15:1に、Hopeの上では3:1に分離した。このことから、シコクビエ菌のN4/CS、Hopeに対する非病原性は、それぞれ4遺伝子、2遺伝子に支配されていることが判明した。また、分離パターンの比較解析から、Hopeに対する2遺伝子は、N4/CSに対する4遺伝子のうちの2つと同じもであることが判明した。そこで、HopeとN4/CS両方に作用する遺伝子をA1, A2, N4/CSのみに作用する遺伝子をA3, A4とした。A4をクローニングするため、A4のみをもつ菌系をBr48で戻し交雑し、BC1F1菌系群を得た。これをN4/CSに接種したところ、非病原性菌系と病原性菌系1:1に分離した。すなわち、A4の単独分離集団が得られた。このデータをもとに、非病原性バルク・病原性バルクを作成した。一方、N4 x HopeのF2に上記F1菌系を接種した結果、A3に対するR3, A4に対するR4を検出することに成功した。このことから、シコクビエ菌とコムギの間の非親和性も、Gene-for-gene関係に従うことが確認された。 一方、ペレニアルライグラス菌のPWT3を破壊したところ、幼苗検定においてコムギに病原性となることが明らかとなった。これは、穂を用いた検定でも確認された。エンバク菌のPWT3, PWT4を破壊したところ、幼苗を侵すことはできなかったが、穂に対する病原性を獲得することが明らかとなった。以上のことから、非病原力遺伝子の機能欠損により、ホストジャンプが起こりうることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
シコクビエ菌のコムギに対する非病原性の遺伝解析を詳細に行ったところ、3遺伝子という予想に反し、4遺伝子が検出された。そのため、クローニング戦略の再構築が必要となったが、そのうち1つの遺伝子についてはクローニングのための単独分離集団を作成することができ、あとはバルクシーケンスを待つばかりになっている。二つ目の遺伝子については、既知の遺伝子PWT3のホモログであると予想されたので、ホモロジーに基づいてクローニングし、形質転換を待つばかりになっている。一方、ペレニアルライグラス菌・エンバク菌の非病原力遺伝子を破壊すると、コムギの穂に病原性となることを証明できた。これは大きな成果であると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
A4については、バルクシーケンスにより座乗領域の絞り込みを行い、クローニングを試みる。A3については、クローニングしたPWT3ホモログをコムギ菌に形質転換して相補性試験を行い、仮説が正しいかどうか証明する。A1、A2については、高温でA2が作用しなくなることを利用し、まず、A1の分離を明らかにする。このデータをもとに、非病原性バルク・病原性バルクを作成し、バルクシーケンスにて座乗領域を絞り込み、クローニングを試みる。A1のクローニングができれば、A1の破壊株を作成する。これをHopeに接種すれば、A2の単独分離が認められるはずである。この分離データをもとに、同様にバルクを作成し、A2のクローニングを試みる。
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Research Products
(4 results)