2015 Fiscal Year Annual Research Report
病原性糸状菌の感染プライミングを誘導する植物由来の未知因子の解析
Project/Area Number |
26292028
|
Research Institution | 国立研究開発法人農業生物資源研究所 |
Principal Investigator |
西村 麻里江 国立研究開発法人農業生物資源研究所, 植物科学研究領域 植物・微生物間相互作用研究ユニット, 主任研究員 (30370670)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
瀬尾 茂美 国立研究開発法人農業生物資源研究所, 植物科学研究領域 植物・微生物間相互作用研究ユニット, 主任研究員 (80414910)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 植物微生物間相互作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
多くの植物病原性糸状菌において感染できる植物種(宿主植物)は決まっており、菌による宿主植物への感染成立は植物側の因子が決定すると考えられてきた。一方、植物病原性糸状菌は感染時に細胞壁構成多糖の構成を変化させ、細胞壁表層に植物難分解性多糖α-1,3-グルカンを蓄積することにより植物の防御応答(自然免疫)を回避して侵入することが明らかになっている。このことは菌が何らかの宿主植物由来の因子を認識すると宿主免疫回避機構を活性化して感染に備えることを示唆する。以上から、菌が植物由来の因子により宿主/非宿主を認識して感染準備をする/しないを決定することが感染成立の一因になっている可能性が考えられたため、本研究では植物因子に対する菌の応答と宿主性の相関について解析を行うこととした。 炭疽病菌Colletotrichum fioriniaeは多犯性であり様々な植物に感染する。これまでの解析から、C. fioriniaeに対してルテインが上記の宿主免疫回避機構を活性化する宿主植物因子の1つとして同定された。ルテインは植物一般に見られるフラボノイドであり、、C. fioriniaeの宿主植物が共通して持つ化合物の1つである。また、他のColletotrichum属菌においてもルテインに応答した細胞壁構成多糖構成の変化が確認された。以上の内容をまとめて論文投稿を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成27年度は諸事情により研究を予定通りに遂行することができなかったが、これまでに得られた成果については論文としてまとめて投稿した(リバイス中)。
|
Strategy for Future Research Activity |
多糖α-1,3-グルカンは植物にとって難分解性であり、植物病原性糸状菌は感染時に表層へα-1,3-グルカンを蓄積することにより植物免疫(PTI)による攻撃を回避して感染することが示唆されている。本研究では、様々な植物に感染する多犯性病原性糸状菌であるColletotrichum fioriniaeでは植物に普遍的に見られる因子に応答して菌の細胞壁表層へのα-1,3-グルカンの蓄積が誘導されることを見いだした。そこでH28年度は同定した植物因子を用いて病原性糸状菌の宿主範囲とこの因子への応答性の相関を解析する。さらにこの因子に応答する病原性糸状菌の遺伝子発現を解析する。H27年度に予定していたC. fioriniaeの感染におけるα-1,3-グルカンの機能解析も行う。得られた成果から、病原性糸状菌の宿主範囲を決める要因の1つとして植物側の因子のが関わっているかどうかを検証する。
|
Causes of Carryover |
諸事情により研究計画が十分に遂行できなかったため。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
H28年度はH27年度分の計画もあわせて実施する。研究推進を加速するために実験補助員を雇用する。
|