2015 Fiscal Year Annual Research Report
植物起源エリシターの組み合わせ処理による植物の被食防衛機構の解明とその応用
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26292030
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
高林 純示 京都大学, 生態学研究センター, 教授 (10197197)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ジャスモン酸 / サリチル酸 / ポリアミン / 揮発性物質 |
Outline of Annual Research Achievements |
植物の食害に対する防衛反応は複数のシグナル系によって駆動されているが、それらの関係性には未解明な部分が多い。その解明は被食防衛反応の全体像の構築と農業への応用のための重要な課題である。研究代表者らは、植物の防衛能力は植物起源の外部刺激(エリシター)によって操作できることを明らかにしてきた。本研究は、複数のエリシターを組み合わせて植物に処理し、複数のシグナル系を操作することで、シグナル系間の関係性を解明する。さらにそれを有効利用した農作物の防衛能力の強化に関する研究を行う。(1)キャベツへのジャスモン酸のアナログである農薬資材N-Propyl dihydrojasmomate (PDJ)処理の効果について継続して調べた。処理によってアオムシサムライコマユバチに対する誘引性の向上が認められた。(2)圃場で、PDJとすでにジャスモン酸誘導性の防衛活性に協力的に働くスペルミンの同時処理、PDJ単独処理、無処理区を設定し、その後のセイタカアワダチソウの成長を調査した。同時処理区で種子数の増加が認められた。各処理セイタカアワダチソウのC/N比に関しても現在解析中である。(3)圃場でダイコンにPDJを処理したところ、様々な害虫の発生が抑制された。(4)初年度行ったイネ苗に対するジャスモン酸処理の影響を時系列的に調査したRNAサンプルの次世代シークエンス解析を完了した。得られたデータの解析は現在実施中である。(5)PDJとスペルモンの同時処理で、ハダニのパフォーマンスが低下することが明らかになった。(6)エリシターとして植物由来の揮発性物質をダイズに処理する圃場実験を実施し、処理による生産量の増加、被害低減効果を検証できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、キャベツへのジャスモン酸のアナログである農薬資材N-Propyl dihydrojasmomate (PDJ)処理実験を野外で実施し、ダイコンでの効果が検証できた。また雑草でのPDJとスペルミンの協力効果も野外で検証した。操作実験系での組み合わせ実験も興味ある結果を得ており、おおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も引き続きエリシターの組み合わせ実験を行う。本年度も、2種および3種のエリシターの組み合わせによる操作実験を行う。3種の組み合わせは、単純にすべてを網羅すると組み合わせ数が多くなりすぎるので 、2種の組み合わせの結果に基づいた3種の組み合わせを行う。研究手法は昨年度の手法に準ずる。
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Causes of Carryover |
予定していた実験で得られるRNAサンプルの解析が次年度にずれ込んだため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
RNAサンプル解析に使用する予定である。
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Research Products
(3 results)