2014 Fiscal Year Annual Research Report
群集生態学的アプローチによる土壌中のリンをめぐる微生物応答の数理的記述の試み
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26292035
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大塚 重人 東京大学, 農学生命科学研究科, 准教授 (10313074)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
長岡 一成 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 中央農業総合研究センター土壌肥料研究領域, 主任研究員 (80355544)
國頭 恭 信州大学, 理学部, 准教授 (90304659)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 土壌微生物 / リン酸 / 群集構造 / 土壌酵素活性 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は、森林土壌を材料とした実験のみを行う予定であったが、畑土壌を用いた実験も開始した。 ①【リン酸化合物添加に対するホスファターゼ活性およびβ-D-グルコシダーゼ活性の応答~本実験】畑の黒ボク土と森林の褐色森林土を供試し、C源とN源を添加し、リン獲得酵素であるアルカリホスファターゼ(ALP)と酸性ホスファターゼ(ACP)、炭素獲得酵素であるβ-D-グルコシダーゼ(BG)の活性を測定した。その結果、土壌の種類によって応答は異なった。黒ボク土は弱酸性であるにもかかわらず、ACP/BG比よりもALP/BG比の方がC・N添加への応答が大きかったが、褐色森林土では、ALP/BG比の方ががACP/BG比よりも小さな応答を示した。 ②【フォスファターゼ活性、β-D-グルコシダーゼ活性、および土壌細菌群集構造との関係性】上記と同じ黒ボク土(畑地)および褐色森林土(森林)の試料から土壌DNAを抽出し、細菌の16S rRNA遺伝子V4領域をPCR増幅して、次世代シーケンサーMiseqを用いた大量解読を行った。細菌の門レベルの分類構成を解析した結果、土壌の種類やフォスファターゼ活性等と門レベルでの細菌群集構造との間には明確な関係は認められなかった。 ③上記の土壌の一部から、リン酸カルシウムまたはリン酸鉄を唯一のリン酸源とする培地を用い、それらのリン酸塩を溶解する細菌の分離を行った。分離された細菌を、それらの培地で繰り返し植え継いで培養を続けた。5ヶ月以上の継代に耐えて生残した細菌は、ほとんどBurkholderia属細菌と同定され、それらは系統学的に2つに分けられた。一方の系統は培地中のpHを下げつつリン酸塩の溶解し、培地中に遊離したリン酸塩が蓄積した。他方の系統は、培地のpHをほとんど下げなかったが、よく増殖したことから生育に必要な量のリン酸を溶解するが、過剰には溶解しない機能を持つと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
黒ボク土から再現性よい効率でDNAを抽出することが困難で、抽出条件の最適化に時間を要した。そのため、次世代シーケンサーを用いた解析が遅れた。 DGGEおよび定量PCRのための、新たなフォスファターゼ遺伝子用PCRプライマーの開発も試みたが、これについては成果が得られなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
土壌から安定した抽出効率でDNAを得られるようになったため、この後の次世代シーケンサーを用いた解析は遅れないと考えられる。 DGGEおよび定量PCRについては、既存のプライマーをいくつか組み合わせて用いることで、まずは先に進めることとした。 その他の研究項目は順調である。H26年度に得られたデータを元にして、H27年度はポイントをしぼって土壌マイクロコズム実験のデータの量を増やす計画である。
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Causes of Carryover |
研究代表者の方で、土壌からのDNA抽出の条件検討に時間がかかり、そのDNAを材料として行う次世代シーケンサーMiseqによる塩基配列大量解読の開始が遅れたことが主因である。この解析は高額な試薬や器具を必要とするため、この解析のために予定していた経費執行がH27年度にずれ込んだため、次年度使用額が発生した。 また、分担者の方でも、DGGEや定量PCRに用いるためのプライマーの検討に時間を割き、H26年度はDGGEや定量PCRができなかった。次年度使用額の一部には、これらの実験を行う費用も含まれる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
土壌からのDNA抽出の問題点は解決したため、今後はMiseqによる解析がスムーズに進むと見込まれ、研究費の使用に特段の問題はない。 また、DGGEと定量PCRに用いるプライマーも既存のものに変更し、H27年度に実験を進めるための具体的な計画を立ててある。こちらについてもH27年度中に使用することになるだろう。
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Research Products
(2 results)