2015 Fiscal Year Annual Research Report
ダイズにおける根粒固定窒素と根吸収窒素の移動機構と窒素固定硝酸阻害の網羅的解析
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26292036
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
大山 卓爾 新潟大学, 自然科学系, 教授 (30152268)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
末吉 邦 新潟大学, 自然科学系, 教授 (10216278)
大竹 憲邦 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (50313507)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 植物栄養学 / ダイズ / 窒素固定 / 根粒 / 硝酸 |
Outline of Annual Research Achievements |
マメ科植物であるダイズは、根粒菌と共生し根に根粒を形成することで、大気中の窒素(N2)を固定利用することができる。しかし、根のまわりに窒素化合物、特に硝酸が存在すると根粒の生長や窒素固定活性が阻害されることが知られている。 平成27年度は、無窒素培地で栽培したダイズ幼植物に5 mM硝酸または5 mMアンモニウムを供給後、短時間における体内各部位のアミノ酸、光合成産物等の成分濃度を測定した。ダイズ(品種 Williams)に根粒菌を接種し、バーミキュライトで発芽させ、5日間後に水耕栽培に移植した。その後, 人工気象装置内で、昼期間28℃・16時間、夜期間18℃・8時間、無窒素条件で栽培した。播種後19日目に培養液に5 mM硝酸または5mMアンモニウムを加え、添加0,4,8,16,24時間後に、葉身、茎、根上部(根粒着生部位)、根下部(根粒非着生部位)、根粒に分け、サンプリングを行った。21種のアミノ酸とアンモニアは、UPLCを用いて分析した。根においては、アンモニア投与でグルタミン、アスパラギン濃度が投与4時間目から急激に上昇したが、硝酸投与では、投与8時間後から徐々に上昇した。根粒において、硝酸またはアンモニウムの供与後、アスパラギン、グルタミン、アスパラギン酸濃度が増加した。茎、葉身でも、アンモニア投与8時間目からアスパラギン、グルタミンの濃度が上昇したが、硝酸投与では葉身のアスパラギンのみ上昇がみられ他のアミノ酸には大きな変動はなかった。 また、5mM硝酸投与1日後の遺伝子発現の変化を調べるため、無窒素栽培植物と、硝酸投与植物の根粒、根、葉身をサンプリングし、委託分析によりRNAseq分析を行った。データはすでに得られているが、データが膨大なため、現在解析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
培養液への硝酸添加によりダイズ根粒の肥大生長や活性の阻害を引き起こす。本年度は、培養液への硝酸またはアンモニウム添加4時間から24時間までの短時間における、根、根粒、茎、葉身の代謝産物の変化の網羅的解析を実施することができた。アンモニウム投与では、4時間から根のグルタミン、アスパラギン濃度の上昇がみられ根粒でも同様の結果が得られた。硝酸添加の影響は、アンモニアよりもやや遅く、グルタミン、アスパラギン濃度の上昇がみられた。茎では、アンモニウム投与により、アスパラギンとグルタミンの濃度上昇がみられたが、硝酸投与では、アミノ酸濃度に大きな変動はなかった。葉身では、硝酸投与、アンモニウム投与ともに、アスパラギン濃度の上昇が早期からみられた。これらの結果は、硝酸による根粒の生長や窒素固定の阻害は、必ずしも地上部の代謝を介しているのではなく、根と根粒の代謝変化が主要な要因であると考えられた。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、5mM硝酸添加1日後の根、根粒、葉身のRNAseqデータの解析を実施する。さらに、より短時間(1時間程度)の硝酸投与後の根、根粒の遺伝子発現解析をRNAseqを用いて分析する。 硝酸供与後、培養液を無窒素培地に戻し、0,1,2,3日後の根、根粒、茎、葉身の代謝産物の変化の網羅的解析を実施する。これにより、硝酸培地から無窒素培地に戻した時の根粒生長、窒素固定活性の回復との関連性について検討する。
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Causes of Carryover |
基金分H27年度受領額408,740円のうち、173,572円を使用したため、残額235,168円が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
基金分残額235,168円については、物品費、その他で H28年度に使用する予定である。
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Research Products
(4 results)