2014 Fiscal Year Annual Research Report
アルドキシムーニトリル経路の酵素類の有機合成への利用と生理学的意義の解明
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26292041
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Research Institution | Toyama Prefectural University |
Principal Investigator |
浅野 泰久 富山県立大学, 工学部, 教授 (00222589)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
米田 英伸 富山県立大学, 工学部, 准教授 (50285160)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | アルドキシム脱水酵素 / ニトリルヒドラターゼ / アルドキシムーニトリル経路 / 光学活性ニトリル |
Outline of Annual Research Achievements |
1.合成アルドキシムを基質とするアルドキシムデドラターゼ(Oxd)反応の立体選択性の解明と光学活性ニトリルの合成への利用:α位に置換があり、R, Sの立体と、E, Zのジアステレオマーを有し、4種類の異性体がある2-フェニルプロピオンアルドキシムを基質として用いた。Bacillus sp. OxB-1由来のOxdB を発現する大腸菌形質転換株を用いて、ラセミ体基質(E/Z比9:1) を反応させたところ、88% ee の2-(S)-フェニルプロピオニトリルが合成できた。さらにE-ラセミ体 (E/Z比 99:1)を基質とした場合、98% ee の2-(S)-ニトリルを得た。一方、Z-ラセミ体(E/Z 比 1 : 11.5)を反応させたところ、67% ee の2-(R)-ニトリルを得た。これらはいずれも8oCで得られ、30oCではE, Z異性化反応によりラセミ体が合成された。いずれも、E-(2R)- フェニルプロピオンアルドキシム (E-(R)-2a)は、基質とならなかった。また、Arabidopsis thaliana 由来のCYP79A21をBacillus sp. OxB-1由来のOxdを大腸菌で同時に発現し、L-Phe を原料としてフェニルアセトニトリルを 662 mg/L の濃度で代謝工学的合成に成功した。 2.アルドキシムーニトリル経路の生理学的意義の解明: Bacillus sp. OxB-1やR. rhodochrous YH3-3の全ゲノム解析を行った。 3.耐熱性や高アクリルアミド耐性のNHase産生菌の探索とRhodococcus属細菌のNHaseとの比較:新たに土壌より分離した好熱性細菌が耐熱性のNHaseを産生することを明らかにし、菌体レベルでの熱耐性をRhodococcus属細菌と比較した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
以下のように、我々は広範な探索研究により、オリジナルの材料および、酵素遺伝子素材の手がかりを十分に得ており、今後の展開が期待される。いずれも当然ながら、世界で初めての知見ばかりを得る予定である。 1.我々が2000年に最初に報告した新酵素であるアルドキシムデヒドラターゼの基質特性を、化学合成した立体化学を有する基質を用いて初めて検討したところ、エナンチオ面を認識して脱水反応を触媒していることを発見し、さらに本酵素を用いて光学活性なニトリルを純度高く合成できることを世界で初めて明らかにした。また、植物由来のCYP79A21とOxdを大腸菌で同時に発現することにより、フェニルアセトニトリルを合成した論文は、Appl. Envirom. Microbiol. 誌のSpotlight: Articles of Significant Interest Selected from This Issue by the Editorsとして選定され注目を浴びた。 2.Bacillus sp. OxB-1やR. rhodochrous YH3-3の全ゲノム解析を行った。今後、アルドキシムを合成する酵素などの探索が可能である。また、動植物におけるアルドキシム、ニトリルの代謝酵素の存在についても、酵素および遺伝子レベルで解明する材料を確保している。 3.耐熱性や高アクリルアミド耐性のNHase産生菌をすでに得、大腸菌での発現にも成功しており、目的とする成果が出る目途がついている。
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Strategy for Future Research Activity |
1.我々が以前に解明したRhodococcus sp. N-771のOxdの立体構造や、Pseudomonas chlororaphis B23 (OxdA)の立体構造の情報からBacillus sp. OxB-1のOxdの構造をソフトウエアを用いて推定し、ドッキングシミュレーションを行うことにより、26年度に明らかにした本酵素のエナンチオ選択性、基質特異性や E (2R) フェニルプロピオンアルドキシムが基質とならない点を構造の面から推定する。また、各種の他期限のOxdについて遺伝子を収集しライブラリー化を進める。さらに他の合成基質を合成し、反応性および立体選択性を明らかにする。 2.アルドキシムーニトリル経路の生理学的意義の解明:新酵素アルドキシム合成酵素について、Bacillus sp. OxB-1やR. rhodochrous YH3-3の全ゲノム解析を行った。動植物がアルドキシムーニトリル経路を有することを明らかにしており、酵素および遺伝子レベルでの解析および比較を行う予定である。微生物および動植物のアルドキシムーニトリル経路を代謝産物、酵素および遺伝子レベルで明らかにする。 3.耐熱性や高アクリルアミド耐性のNHase産生菌の探索とRhodococcus属細菌のNHaseとの比較:新たに土壌より分離した好熱性細菌およびRhodococcus属細菌のNHase遺伝子をクローニングし、大腸菌で発現させる。酵素レベルでの熱耐性を明らかにするとともに比較する。
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Causes of Carryover |
国内旅費、および計画していた海外旅費を全く使用していなかった点、並びに消耗品費を節約できたことから次年度に資金を繰り越すことができた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度は、海外で、学生と共に動植物酵素材料を採集、精製する計画を立てている。さらに国内外での会議などでの研究成果の発表にも旅費を使用する計画である。平成26年度において、節約できていた消耗品費についても、研究活動を一層活発化する計画であるので、大いに利用させていただく。
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