2014 Fiscal Year Annual Research Report
合成化学と構造生物学で解明するユニークなテルペン合成酵素の反応機構
Project/Area Number |
26292058
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
葛山 智久 東京大学, 生物生産工学研究センター, 准教授 (30280952)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | テルペン / 生合成 / 放線菌 / 反応機構 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、特徴的な放線菌由来のテルペン合成酵素として、本申請者らが見出したcyclooctat-9-en-7-ol合成酵素(CotB2)、4環性ジテルペン炭化水素合成酵素(SCLAV_p0765)、cyclolavandulyl diphosphate合成酵素(CLDS)、carbazole骨格に対するプレニル基転移酵素(CarPTase)を研究対象として選抜し、テルペン化合物の構造多様性創出機構の一端を明らかにしようというものである。これらのうち、平成26年度は、CotB2の反応機構の解明に主に取り組み、CotB2の特異的な環化反応の解明に成功した。具体的には、重水素標識した基質、geranylgeranyl diphoshateを合成し、CotB2と反応させることにより、その重水素の位置を特定することで、2回の1,5-ヒドリド転移、1回の1,3-ヒドリド転移、1回の炭素-炭素結合の組換えにより、立体化学が制御されながら反応産物が合成されるという精巧な反応機構を明らかにすることができた。この成果をドイツの化学系の学術誌であるAngewandte Chemie International Editionに掲載することができた。この成果は、生物が進化の過程で獲得したテルペン合成酵素の複雑で精巧な反応機構を明らかにしたものであり、今後のテルペン環化酵素の論理的なデザインに向けた研究の基礎となりうる。また、CLDSについては、その推定反応機構を提唱し、米国の化学系の学術誌であるJournal of the American Chemical Societyに掲載することができた。さらに、計画以上に進行してCLDSの結晶化にも成功した。現在、CLDSのX線結晶構造解析に精力的に取り組んでいる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度には、主に<CotB2に関する研究>と<SCLAV_p0765に関する研究>の2つの研究を計画した。これらのうち<CotB2に関する研究>では、申請書に記載したように、各位置の水素原子を重水素原子に置換した基質、geranylgeranyl diphoshateを化学合成し、精製したCotB2と反応させ、生成した反応産物の構造をNMRで決定することによりCotB2の触媒反応のカスケードを明らかにして論文発表することができた。したがって、当初の計画通り順調に進展していると判断した。<SCLAV_p0765に関する研究>については、申請書に記載したように、Streptomyces albusでの異種発現に成功し、[U-13C]glucoseを取り込ませることで13C標識した反応産物を生成させ、その後、クロマトグラフィーで精製することができた。さらには、NMRを用いて13Cの取り込み位置を同定し、SCLAV_p0765の反応機構を推定することができた。したがって、順調に進展していると判断した。一方、SCLAV_p0765の環化の反応機構についてはまだ論文投稿はできていないが、SCLAV_p0765の触媒機能については、共著でProceeding of National Academy of Sciences USAに掲載することができた。これらの成果以外にも、CLDSに関しては当初の計画よりも進展し、その結晶化に成功した。現在、X線を用いた結晶構造解析を進めている。以上の成果を「研究の目的」に照らし合わせて、おおむね順調に進展していると判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は、CotB2の精巧な反応機構をさらに詳細に解明するため、構造生物学を駆使してさらに研究を推進する。具体的には、CotB2の基質アナログであるgeranylgeranyl thiodiphosphateを化学合成し、CotB2との共結晶化を目指し結晶構造解析に全力をあげる。次に、解明した結晶構造に基づき、反応カスケードに重要と考えられるアミノ酸残基に点変異を導入した変異酵素を作製して、CotB2反応を行い、その反応産物の構造を決定することで反応中間体の同定を試みる。さらには、重水素置換基質と反応させ、生成した反応産物の化学構造を決定する。これらのすべてのデータを統合することで、特徴的な立体選択的テルペン環化反応機構の全容解明を目指す。CLDSに関しては、すでに前倒しで結晶化に成功しているので構造解析を急ぎ、次いで、CotB2と同様に変異酵素や重水素置換基質を用いた反応機構に研究を進める。SCLAV_p0765とCarPTaseについては、結晶化スクリーニングを開始し、様々な沈殿剤や結晶化条件を検討することで良好な結晶を得て、シンクロトロンなどでのX線回折データの収集と解析により結晶構造の解明に専念する。さらには、CarPTaseについては、基質特異性とプレニル化の位置特異性について検討を開始する。以上のように、化学合成基質を用いた酵素反応の解析と結晶構造解析に基づいた構造基盤とを統合して、放線菌が生産するテルペン化合物の構造多様性創出機構の一端を明らかにすることを目指す。
|
-
[Journal Article] An unusual terpene cyclization mechanism involving a carbon-carbon bond rearrangement2015
Author(s)
Meguro A, Motoyoshi Y, Teramoto K, Ueda S, Totsuka Y, Ando Y, Tomita T, Kim SY, Kimura T, Igarashi M, Sawa R, Shinada T, Nishiyama M, Kuzuyama T.
-
Journal Title
Angewandte Chemie International Edition
Volume: 54
Pages: 4353-4356
DOI
Peer Reviewed / Acknowledgement Compliant
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-