2014 Fiscal Year Annual Research Report
呼吸鎖複合体-Iの1分子計測を実現する特異的化学修飾法の確立
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26292060
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
三芳 秀人 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (20190829)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 生物制御化学 / 呼吸鎖酵素 / 複合体-I |
Outline of Annual Research Achievements |
複合体-Iの動きを可視化するためには、酵素を可視化プローブによって位置特異的に標識する必要がある。これを達成するためのタンパク質の標識手法としてLDT chemistryの手法を取ることを選択し、LDT chemistryに利用可能なリガンドとして、複合体-Iに強い結合親和性を有するアセトゲニンを利用することとした。アセトゲニンの活性発現に影響のないアルキル鎖末端にトシルを有するリガンド(アセトゲニン-リガンド)をデザイン合成した。合成した2種類のアセトゲニン-リガンドはいずれもウシ心筋ミトコンドリアの複合体-Iに強い結合親和性(阻害効果)を維持することを確認した。 合成したアセトゲニン-リガンドを用いてウシ心筋複合体-Iのアジド化あるいはアルキン化を試みた。標識されたサブユニットのペプチド限定消化およびペプチド断片の精密質量分析を行った結果、キノン結合ポケットを構成すると考えられている49 kDaサブユニットのAsp160(49 kDa Asp160)が特異的にアジド化あるいはアルキン化されていることが判明した。この標識の反応収率を概算したところ、両リガンドとも約50%であることが明らかになった。また、この標識はロテノンなどのキノン結合ポケットに作用すると考えられている他の阻害剤によって顕著に抑制されることがわかった。残念ながら、49 kDa Asp160が標識を受けることによって、キノン還元活性が完全に阻害されてしまうことが明らかになった。このため、キノン結合ポケット内を位置特異的に標識する技術は確立できたものの、このままでは複合体-Iのターンオーバーに伴う構造変化などをモニターすることはできない。次年度から解決策を考える必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アセトゲニン-リガンドを用いたLDT chemistryによって、複雑な膜タンパク質である複合体-Iを位置特異的に化学修飾できることが判明したことは大きな成果であった。また、キノン結合ポケットを構成すると考えられている49 kDa Asp160が強い求核性を有するということがわかったことは予想外の発見であった。
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Strategy for Future Research Activity |
キノン結合ポケットを構成すると考えられている49 kDa Asp160が特異的に化学修飾されることがわかった反面、この位置の修飾によって酵素活性が失活したことから、別の位置に対して標識することを試みる必要が出て来た。この解決策として、アセトゲニン以外の阻害剤をリガンドして用いることを考慮する必要がある。
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Causes of Carryover |
合成関連の研究に要する消耗品費について、当初計画していたより支出が少なかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
27年度に実施する合成関連の研究に合わせて使用する。
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Research Products
(5 results)