2015 Fiscal Year Annual Research Report
経口投与で有効な新規神経調節ペプチドの受容システムの分子機構解明
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26292070
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
大日向 耕作 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (00361147)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ペプチド / 情動調節 / 腸-脳連関 / セロトニン5HT1A / ドーパミンD1 / GABAA |
Outline of Annual Research Achievements |
これまで我々は食品タンパク質を酵素消化した際に生成するペプチドが多彩な生理作用を示すことを見出した。中には情動調節作用や食欲調節作用などを示す場合があり、食品成分と神経系の新しい相互作用が明らかとなってきた。 これまでに、主要な大豆種子貯蔵タンパク質であるβ-コングリシニンをキモトリプシン消化した際に生成する11残基が経口投与で精神的ストレス緩和作用(抗不安様作用)を示すことを見出している。さらに作用機構を検討した。分子量が大きいにも関わらず経口投与で強力な効果を示すことから、まず、消化管に作用し中枢にペプチドシグナルが伝達されるものと考えられる。そこで、末梢情報を中枢に伝達する迷走神経の関与について検討した。その結果、11残基ペプチドの経口投与により、迷走神経が入力する孤束核において神経活動マーカーのc-Fosの発現が上昇することが判明した。吸収を前提としない腸-脳連関を介した作用と考えられる。さらに、薬理学的検討により、本ペプチドの抗不安様作用は、セロトニン5-HT1A、ドーパミンD1、GABAA受容体の活性化を介していることが明らかとなった。これまでの検討から5-HT1A→D1→GABAAという作用経路を明らかにしているが、さらに、どの部位の受容体の活性化が重要か否かを検討した。5-HT1Aアゴニストは経口投与では効果を示さず脳室内投与で抗不安様作用を示すことを見出した。すなわち、大豆ペプチドにより活性化される5-HT1A受容体は中枢に存在することが判明した。おそらく、経口投与された大豆ペプチドは、消化管→迷走神経→孤束核→中枢5-HT1A→D1→GABAAという経路を介して抗不安様作用を示すものと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
経口投与で顕著な効果を示す11アミノ酸残基の抗不安ペプチドを新たに見出し、腸-脳相関および中枢神経経路を明らかにした。研究は順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
経口投与で強力な生理活性を示す大豆由来の中鎖ペプチドについて作用機構の解明を図る。特に、シグナル伝達経路を明らかにする。
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Causes of Carryover |
ペプチドを依頼合成する予定であったが、より迅速に効率的に実験を推進するために、研究室で合成し精製することにしたため、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
機能性ペプチドのシグナル伝達経路の解明に使用する。
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