2014 Fiscal Year Annual Research Report
侵略的外来線虫の分布拡大速度に及ぼす土着線虫と媒介昆虫密度の影響
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26292080
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
富樫 一巳 東京大学, 農学生命科学研究科, 教授 (30237060)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松永 孝治 独立行政法人森林総合研究所, 林木育種センター, 主任研究員 (40415039)
杉本 博之 山口県農林総合技術センター, 林業技術部, 専門研究員(総括) (00522244)
岡田 充弘 長野県林業総合センター, 育林部, 主任研究員 (90450816)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 林学 / 森林保護学 / 侵入生物 / マツ材線虫病 / マツノマダラカミキリ / マツノザイセンチュウ / ニセマツノザイセンチュウ |
Outline of Annual Research Achievements |
マツノザイセンチュウ分離株T-4 とニセマツノザイセンチュウ分離株Srfの合計数を50頭に保ちながら,2種の個体数比を10:0,9:1,7:3,5:5,3:7,1:9,0:10となるように,シャーレ内のB. cinereaの菌叢に接種した。繰り返し数は3である。接種の7日後に培地から4.33%のサンプルをとり,新しいB.cinerea菌叢のあるシャーレに移した。残りの培地とシャーレの内壁から線虫を分離し,その個体数を調べた。さらに,各シャーレの36頭(幼虫と雄成虫)の各個体のrDNAの型を調べた。その後7日おきに接種の35日後まで,線虫個体群の一部を新しい菌叢に移しながらこの調査を続けた。T-4のrDNAを持つ個体をBx rDNA, SrfのrDNAを持つ個体をBm rDNA,および2種のrDNAを持つ個体をBx/Bm rDNAと表すと,9:1でT-4とSrfを接種した場合,接種の2週後に3個体群ともBx rDNAを持つ個体の割合は100%に達した。7:3でT-4とSrfを接種した場合,4週後に3個体群ともBx rDNAを持つ個体の割合は100%に達した。5:5でT-4とSrfを接種した場合,4週後に2個体群がそうなったが,1個体群では5週後にも雑種個体が出現した。これに対して,1:9でT-4とSrfを接種した場合,2個体群が4週後に,3:7でT-4とSrfを接種した場合,5週後にそれぞれ2個体群でBm rDNAを持つ個体の割合が100%に達した。興味深いことに1:9でT-4とSrfを接種した1個体群ではBx rDNAを持つ個体の割合が2~4週後に減少せず,5週後には雑種個体の割合が高まったことであった。これらの結果は,繁殖干渉による種間競争の予測(頻度依存的な他種の排除)と一致しており,初めて競争係数の予測が可能になった。 これまでの2林分の7年継続調査によって,健全木は病気の流行が起こるのに必要な最小密度以上であっても,媒介昆虫の成虫密度が低いと流行が起こらないこと(Allee効果)が初めて実証された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
長野県でマツ材線虫病の被害程度が異なるように4林分を選び,標準地を選定した。ところが,2014年に標準地でマツが枯れず,線虫のサンプリングを行うことが出来なかった。これを除くと,研究の1年目から,理論による予測が実証されるような結果が得られた。そのため,研究は「おおむね順調に進展している」と判断された。
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Strategy for Future Research Activity |
研究は,おおむね順調に進展している。そのため,当初の計画通りに研究を進める。
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Causes of Carryover |
野外調査地周辺の新しい枯死木の伐採了解に時間がかかっていること,および調査地周辺の枯死木の一部が松本市の事業で伐採されることになった。そのため,予定していた枯死木伐採-丸太と線虫のサンプリング,丸太と線虫の運搬,線虫の培養と遺伝子解析が先送りになった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年の材線虫病の感染時期の前に,昨年からこれまでに発生した枯死木を伐採する費用と,その後の材料の処理費用に当てる。
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