2014 Fiscal Year Annual Research Report
藪の中の微気象-競争モデル 伐採区をどこまで狭くすれば下刈りは不要になるのか?
Project/Area Number |
26292082
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
水永 博己 静岡大学, 農学研究科, 教授 (20291552)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
楢本 正明 静岡大学, 農学研究科, 准教授 (10507635)
王 権 静岡大学, 農学研究科, 教授 (50402235)
飯尾 淳弘 静岡大学, 農学部, 特任助教 (90422740)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 藪 / 下刈り / 微気象 |
Outline of Annual Research Achievements |
「下刈り不要の施業のためには伐採区をどこまで狭くする必要があるだろうか?」の問いに、藪内の光資源をめぐる競争過程のプロセスモデル構築を通じて回答することを目的とする。 伐採後に生じた37の藪群落コドラート(1mx1m)について群落上部のGap light index、20cmごとの階層別の相対光量子束密度(各層、各群落200~300ポイント)および種ごとの葉面積指数を測定した。全群落で45種の植物が出現し0.42~8.46の幅広いレンジの葉面積指数が観測された。藪群落の葉面積指数と伐採区のギャップサイズは弱い正の相関があった。 藪群落に出現した43種、265葉について、葉内二酸化炭素濃度が300ppmのときの最大光合成速度、呼吸速度、LMA、ガスコンダクタンス、葉内窒素および土壌窒素、光環境を測定した。これらのデータを用いて光資源あるいは土壌中の窒素資源に対する最大光合成速度の反応を示す種特性値を求める階層ベイズモデルを作成した。土壌窒素に対する形態の可塑性と葉中窒素の可塑性にはトレードオフ関係が認められ、土壌窒素の変化に対して常緑広葉樹は葉の厚さを変化させやすく、落葉先駆樹種は葉中窒素を変化させやすい傾向にあることがわかった。このモデルを用いて、光環境及び土壌窒素に対する最大光合成速度の反応曲線の種特性のデータベースを整理した。37群落の低木群落の種別葉面積構成比とそれぞれの種の特性値をリンクして、8月の晴天時の群落光合成速度を計算した。群落光合成速度は種の多様性と弱い正の相関が認められた。また土壌窒素濃度が変化したときの群落光合成の感度分析を行ったところ、高い種多様性指数を持つ低木群落は群落光合成速度の変化が小さかった。これらのデータは光や土壌環境の異なる場所での藪群落の発達速度の予測に用いられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
モデル構築のためのパラメータ収集は、バイオマスデータ、微気象データ、低木生理データ、スギ・ヒノキ被陰データともに順調に収集されている。
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Strategy for Future Research Activity |
藪群落バイオマスデータ及び低木生理データについて、より多様な環境条件下において収集し、環境に対するレスポンスを帰納・演繹両面から種特性を明らかにする。100コドラート以上1000葉以上のデータ収集をし、階層ベイズ的手法により伐採地に出現する種のポテンシャルを評価する。 微気象モデル構築のため枝葉の構造を解析するとともに、三次元レーザ計測により個体の葉分布構造を把握し、個体の受光特性を明らかにする。このようなモデルをもとにして藪群落内の多層放射伝達モデルを開発する。 スギ、ヒノキの側方被陰下での小枝の炭素収支と、成長特性の定量的関係を明らかにして、炭素収支から個体成長を予測するモデルを開発する。 これらの項目をリンクして、藪群落の競争モデルを構築する。
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Causes of Carryover |
群落測定のために考案していた工業用の内視鏡の使用が予備試験の段階で利用が難しいと考えられ、他の手法に切り替えたため
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
低木の葉分布を測定するための三次元レーザスキャナを購入する。また低木群落を効率よく観察するための低空画像取得をするためのシステムを構築する。
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