2017 Fiscal Year Annual Research Report
藪の中の微気象-競争モデル 伐採区をどこまで狭くすれば下刈りは不要になるのか?
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26292082
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
水永 博己 静岡大学, 農学部, 教授 (20291552)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
楢本 正明 静岡大学, 農学部, 准教授 (10507635)
王 権 静岡大学, 農学部, 教授 (50402235)
飯尾 淳弘 静岡大学, 農学部, 研究員 (90422740)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 下刈り / UAV / 藪 / 微気象 |
Outline of Annual Research Achievements |
下刈りを必要としない更新作業への期待が高まっている。しかし下刈り省力化研究の多くは事例研究や統計的解析にとどまっていて、その結果の適用は限定的である。伐採面が広いほど藪(低木・草本群落)が発達することが知られているが、下刈り不要の施業のためには伐採区をどこまで狭くする必要があるだろうか?本研究は藪内の光資源競争過程を解明することで、この疑問に答える。具体的には、林冠構造と藪の発達、低木種の成長・形態特性、藪内の微気象予測、造林木の炭素収支と生存の四種の情報を統合し、「伐採前の植生や地形条件を入力して、下刈りをしない場合の造林木の炭素収支と成長・生存を予測し、造林目標を達成できる最大伐採面積を出力する」モデルを開発することを狙って行った。 [藪群落の微気象決定要因]藪群落における層別刈り取りにより、吸光係数は群落の葉面積指数と負の相関があり大きい変異を示した。ベイズモデルにより種ごとの吸光係数を推定し、アカガシ、サンショウススキは低くイチゴの仲間は吸光係数が高いと推定された。この推定結果はレーザスキャンにより求めた低木の葉分布構造から得た種ごとの受光効率パターンと矛盾しないものであった。 [側方被陰下での樹木の炭素収支]人工被陰区では強度の側方被陰においても樹高成長への影響は小さかったが断面積成長に対する影響は大きかった。葉量と断面積成長量の関係は被陰上下で大きく異なった。しかしこうした関係は自然の藪群落ではあまり明確ではなかった。 [下刈り放棄7年目のヒノキ生存率]UAVによる空撮画像の解析により7年間下刈りを放置した藪群落内のヒノキ植栽地を解析した。藪に被覆されていないヒノキはヘクタール2000本以上あり、5mメッシュでの最小本数は2本であったことから、十分に成林が期待された。この森林は北向き斜面の30m×50mのギャップであった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
側方被陰と樹木の成長の関係パターンが明らかになり、また藪群落の微気象に関与するパラメータの収集も順調に進んでいる。またUAVを用いた画像解析にも着手できたことから、当初の計画のとおりおおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
UAV画像解析により三次元林冠トポグラフィーを計測し、伐採区画内の微気象の三次元マップを作成する。微気象三次元マップと藪群落の生産力分布の関係について空間自己相関を考慮したモデルを作成する。また藪群落構成種について、レーザスキャン法により三次元葉分布解析を行い、それぞれの種の光利用戦略の微気象環境に対する反応を解析する。林冠トポグラフィーと低木の三次元葉分布特性から、伐採区画内に発達した藪群落の競合関係を予測する。また種の多様な森林群落での地下部での種のすみわけをDNAバーコーディングにより解析し、その結果を藪群落の地下部競争モデルに用いる。
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Causes of Carryover |
次年度に群落内での種間の地下部での競争を把握し、広範囲での林冠トポグラフィー解析や低木の3D構造解析を行うために基金の使用を抑制した。具体的には、土壌の細根のDNAバーコーディングを行うため試薬や解析ソフト等を購入および解析委託に使用する。さらに地下部における根系発達の画像解析に人件費が必要である。またUAVの画像解析ソフトや低木の三次元構造をより効率的に把握する解析ソフトのレンタルに使用する。次年度このような使用計画を予定しており、基金使用を節約した。
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Research Products
(2 results)