2014 Fiscal Year Annual Research Report
開放系森林生態に導入した菌類微生物の動態解明と環境への影響評価
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26292090
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Research Institution | Forestry and Forest Products Research Institute |
Principal Investigator |
升屋 勇人 独立行政法人森林総合研究所, 東北支所, チーム長 (70391183)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
市原 優 独立行政法人森林総合研究所, 関西支所, グループ長 (10353583)
相川 拓也 独立行政法人森林総合研究所, 東北支所, 主任研究員 (90343805)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | スギ花粉 / 寄生菌 / 生物防除 / 影響評価 |
Outline of Annual Research Achievements |
スギの雄花に特異的に寄生する菌類、Sydowia japonicaの植物組織特異的な生物防除剤としての利用可能性を明らかにすることを目的に、自然界での生息状況を明らかにするとともに、人為的に散布した場合と、自然発生している場合、それぞれで、S. japonicaの個体群動態を明らかにし、増殖、分散、消滅のパターン、頻度に違いがあるかどうかを比較するとともに、他生物への影響や相互作用を解明する。本年度はSydowia japonicaの自然界での挙動や影響評価のために、日本における分布調査を行った。また、散布後の消長を明らかにするためにスギ雄花、土壌への胞子懸濁液の散布を行った。分布調査は東北、関西を中心に行い、現時点で20地点での生息を確認した。一方で、スギの分布地域であっても生息が確認できない場所も複数地点あった。その要因については今後解析する予定である。また、スギ雄花、土壌への懸濁液散布を11月初旬に行い、定期的に雄花、土壌を採取した。本研究は27年度の11月まで継続する予定であり、各サンプルについてDNA抽出を行っている。最終的にプールしたDNAは次世代シーケンサーによりメタゲノム解析を行い、原核生物、真核生物それぞれについて解析を行う予定である。さらに、今回、rDNAのITS2領域を対象にしたリアルタイムPCRによる特異的検出法を開発したが、より特異性、定量性を向上させるため、ターゲットとなる遺伝領域を選定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本課題では大きく3つの内容で構成されており、1)菌散布による菌自身の挙動解明、2)周辺生物への影響評価、3)菌の自然分布様式の解明、から成るが、初年度において行った作業は、1)、2)については、手法開発と継続的なサンプル収集、3)については全国分布調査のための一部地域の調査であった。得られたデータは当初予定していた通りのものであり、1)については菌の特異的検出のための手法開発、2)については影響評価のための菌散布開始と定期的なサンプリング、3)については、東北、関西の一部地域での分布確認ができた。これらの結果から、本年度課題については、おおむめ順調に進展していると判断できた。
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Strategy for Future Research Activity |
菌の散布による他生物への影響評価について、散布スケールが小規模なため、現時点では影響はないと判断できたため、今後、菌散布のスケールを大きくするか、計画を変更するかについて検討が必要であった。別課題で菌散布を実行している研究グループとの打ち合わせで、森林総合研究所千代試験地において大規模散布を行う予定があり、そこで影響評価を行うことで了承を得た。今後、前年度実験を行った東北地域だけでなく、関東地域でも調査を行う。
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Causes of Carryover |
平成26年9月に開始予定であった菌懸濁液の散布が、散布液の状態、気象条件、土壌DNA抽出法の再検討が必要であったために、大幅に遅れた。これにより、定期的な土壌採取の開始時期が遅くなり、その分の消耗品費の使用を先送りにした。さらに、次年度での、新たな土壌採取地点の確保の必要性が生じたため、それにかかる人件費、消耗品費の確保が必要と考えた。また、9月までの調査で、菌の分布を規定するスギ雄花の生産が場所によってはほとんど確認されない状況であった。次年度ではスギ雄花が豊作であるため、分布調査を次年度に集中させることで、より多くのサンプリングが可能であると考えられた。そこで、次年度の、特に夏から秋にかけては、これまでに採取できていない地域を中心にサンプリングを行うために、出張旅費の先送りをした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
これまで土壌採取地点として設定していた東北以外に、関東、関西に新たな土壌採取地点を設定し、定期的な土壌採取とDNA抽出を行う。それにかかわる人件費と消耗品費として、前年度からの繰り越し金を使用する。また、これまでの採取されていない地点のうち、特に中部山岳地帯、太平洋側の各地域での採取を行う。これにかかる旅費としても前年度からの繰り越し金を利用する予定である。
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Research Products
(1 results)