2015 Fiscal Year Annual Research Report
開放系森林生態に導入した菌類微生物の動態解明と環境への影響評価
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26292090
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Research Institution | Forestry and Forest Products Research Institute |
Principal Investigator |
升屋 勇人 国立研究開発法人 森林総合研究所, 東北支所, チーム長 (70391183)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
市原 優 国立研究開発法人 森林総合研究所, 関西支所, グループ長 (10353583)
相川 拓也 国立研究開発法人 森林総合研究所, 東北支所, 主任研究員 (90343805)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | スギ花粉 / 寄生菌 / 生物防除 / 影響評価 |
Outline of Annual Research Achievements |
スギの雄花に特異的に寄生する菌類、Sydowia japonicaの自然界での挙動や影響評価のために、日本における自然分布調査を行った。本年度までの結果、現時点で本菌は特に日本海側の、北陸、中国地方に偏って分布していることが明らかとなった。特に分布中心と思われる兵庫、京都、石川ではスギ雄花に普通に見られるだけでなく、1か所でも高頻度に出現する傾向があった。この要因についてMAXENTによる分布要因の解析した結果、冬期の気温、湿度が比較的影響があると考えられた。また、局所的スケールでの環境の影響評価を近畿地方を中心に解析したところ、9月、10月の日射量、日照時間が発生に関与していた。この時期は本菌の胞子飛散時期、スギ雄花への感染時期でもあることから、感染に適した気象条件が本種の分布に影響していると考えられた。一方、スギ雄花、土壌への懸濁液散布の影響評価を行っており、11月初旬に散布を行い、定期的に雄花、土壌を一年間、定期的に採取した。散布後の消長については散布直後では検出されたが、2週間後以降、葉、土壌からは急速に本菌のDNA量が減少した一方、雄花では大きな変化はなかった。このことから本菌はスギ雄花に感染することで生存、越冬が可能になると考えられ、その他の場所では消失すると予想された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
スギ雄花、葉、土壌における環境DNAの回収はすでに完了しており、スギ黒点病菌の検出の有無についてのデータも当初の計画通り取得している。
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Strategy for Future Research Activity |
今回取得されたデータが別の場所でも同じかどうかの検証を行う必要があり、次年度も同様の調査を行うことで、その確証を得たい。
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Causes of Carryover |
研究対象とする菌類の発生消長には季節性があることが判明し、見つけやすい時期と見つけにくい時期があることから、分布調査のためには見つけやすい時期に集中して、調査を行う必要が生じてきた。しかし、広域な調査を短期間で行うには無理があった。よって、次年度と分けて調査するため、旅費を繰り越す必要があった。また、非常勤職員を雇用してサンプルの処理について補助してもらう予定であったが、サンプリング時期が限定されていることや、処理法や調査時期の再検討を行う必要が生じたことから、人件費を翌年に繰り越すこととした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
28年度では27年度までに採取したサンプルについて集中的にDNA抽出等の処理を行う。また、まだ調査を行っていない場所での分布調査を行うことで、日本全国における本菌の分布状況を確認するとともに、分布に影響を与える気候条件を明らかにする。
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Research Products
(2 results)