2015 Fiscal Year Annual Research Report
細胞壁形成の日周性は細胞壁の「構造」と「性質」にどのように影響するのか
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26292095
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
吉田 正人 名古屋大学, 生命農学研究科, 准教授 (30242845)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | プローブ顕微鏡 / AFM / SPM / 細胞壁 / 樹木 |
Outline of Annual Research Achievements |
走査型プローブ顕微鏡は次のような長所を有する次世代型複合顕微鏡である。-電子顕微鏡を凌駕する超高倍率での観察が可能である。-TEMやSEM観察時に生じる電子線による試料劣化がない。-探針が試料表面を接触しない非破壊観察である。-試料表面の物理的な特性を測定できる。これらの長所を樹木細胞壁科学で活かす方法を確立し、これまでに得られていない細胞壁の新知見を探索することに本研究は挑んでいる。 分解能は垂直方向に0.01 nm、平面方向に0.2 nmである。平成27年において、粘弾性モード(力学測定モード)を装備した。これにより、本研究課題によって導入した走査型プローブ顕微鏡システムは、形状像と位想像、粘弾性像の3つが可能になった。形状像は垂直方向の変位量を測定している。 スギ正常材細胞壁二次壁中層(S2層)の横断面を拡大観察し、セルロースミクロフィブリルが十分認識できる倍率で観察すると、直径が10~30 nmの突起状の構造が見られた。突起の高さは3 nm程度であった。 同じ箇所を位想像で観察すると、突起部分は位相の遅れが小さく、その周りには位相の遅れが大きいという分布をしていた。位相の遅れが小さい部分は、硬くて吸着性が小さいと解釈できるため、突起構造がセルロースミクロフィブリルであると判断できた。試料は樹脂包埋してダイヤモンドナイフで表面を仕上げているが、樹脂包埋は位相情報へ影響していないことが確認できた。 粘弾性像はAFMコンタクトモードであるため、分解能とS/Nにおいて,DFM形状・位相像に劣ることが分かった。S2のセルロースミクロフィブリルの配向がプローブの走査方向に影響していることが分かった。SPM平面X方向にセルロースミクロフィブルの影響があるため、情報解釈時には考慮する必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度に形状像と位想像の情報解釈を確立し、本年度は粘弾性像についてその解釈と注意点を明らかにした。この注意点は細胞壁独特のものである。SPMを細胞壁科学で活用する本研究課題は、ノウハウを着実に蓄積している。
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Strategy for Future Research Activity |
細胞壁の形状と物性を測定し、解釈する方法は粗方理解できてきた。この手法を用いて、細胞間層と細胞壁の壁層ごとに情報を蓄積していく。また正常材に比べてあて材では構成成分とその構造が著しくことなるため、あて材細胞壁の情報を蓄積していく。
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