2014 Fiscal Year Annual Research Report
樹木糖鎖でナノ構造を制御するバイオ界面の幹細胞培養戦略
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26292096
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
北岡 卓也 九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (90304766)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 糖鎖 / 自己組織化 / ナノ材料 / バイオインターフェース / 細胞培養 / 分化制御 / シグナル伝達 / バイオマテリアル |
Outline of Annual Research Achievements |
再生医療の要である幹細胞培養技術の新戦略として、樹木糖鎖のセロオリゴ糖でナノ構造化した糖鎖集積バイオインターフェースによる細胞培養を試みる。本年度は、種々の動物細胞を培養することで、マテリアルの界面ナノ構造との関連性を検討した。 1.マウス由来神経幹細胞の分化促進:キトヘキサオースとセロヘキサオースのハイブリッド自己組織化基板上でマウス由来神経幹細胞を培養したところ、糖鎖密度の違いで分化誘導に変化が見られた。市販の細胞培養基板TCPSでは細胞増殖のみが観察される培養条件において、キトヘキサオースの密度が高くなるにつれて神経幹細胞塊ニューロスフィアNSの約40%(200μm以上のNSではほぼ100%)で神経細胞様の突起伸長が認められた。 2.コンドロイチン硫酸膜での細胞培養挙動:主要な細胞外マトリックス(ECM)であるコンドロイチン硫酸(CS)の自己組織化膜上で、マウス神経幹細胞の培養を行ったところ、TCPSでは分化誘導が起こらない10% FBS添加培地において、培養初期からNSの46%に分化が見られ、培養7日後のNSでは66%が分化した。 3.ヒト骨格筋衛星細胞の培養挙動:筋衛星細胞はCSをECMとして通常静止期にあるが、CS発現量の低下とともに不可逆的に筋芽細胞へと分化する。CS膜上で同細胞を培養し増殖率を測定したところ、培養4日目においてTCPSと比べ20%高い細胞増殖が確認された。Au基板では細胞接着が起こらないことから、細胞基底膜様のCS膜の細胞接着促進効果が認められた。今後、分化状態を検討する。 4.マウス筋芽細胞の配列制御:マウス筋芽細胞C2C12をレール状キトオリゴ糖自己組織化基板で培養したところ、細胞伸長方向の制御に成功した。分化に関与するMyoD1等の遺伝子発現挙動をRT-PCRで追跡したところ、糖鎖基板のパターンに依存した遺伝子発現の変化が部分的に見られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の独自戦略である「糖鎖分子鎖ベクトル制御によるナノ構造膜設計」については、キトオリゴ糖やコンドロイチン硫酸の自己組織化基板を用いることで、神経幹細胞や筋肉前駆細胞のユニークな培養挙動を見出すことに成功した。今後、これらの培養細胞の遺伝子・タンパク質発現挙動の解析などを進めることで、界面ナノ構造と細胞の分化・未分化状態の相関性について詳細に研究できる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の最重要課題である「糖鎖の界面ナノ構造が直接誘導する細胞機能」の発現と解析について、より本質に迫る研究を実施する。構造解析については、①NMRによる分子構造同定、②QCM/XPSによる糖鎖密度評価、③FTIR-RASによる分子鎖配向解析などを行う。細胞解析については、①RT-PCRによる遺伝子解析、②免疫染色等によるタンパク質の発現解析、③フローサイトメトリーによる細胞分化状態の解析などを進める。マテリアルの構造解析と細胞のバイオアッセイをより積極的に取り組むことで、細胞形成・分化・機能と糖鎖ナノ界面構造との関係性を明らかにする。
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