2015 Fiscal Year Annual Research Report
樹木糖鎖でナノ構造を制御するバイオ界面の幹細胞培養戦略
Project/Area Number |
26292096
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
北岡 卓也 九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (90304766)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 糖鎖 / 自己組織化 / ナノ材料 / バイオインターフェース / 細胞培養 / 分化制御 / シグナル伝達 / バイオマテリアル |
Outline of Annual Research Achievements |
再生医療の要である幹細胞培養技術の新戦略として、樹木糖鎖のセロオリゴ糖でナノ構造制御した糖鎖集積バイオインターフェースによる細胞培養を試みた。本年度は、(1)GlcNAc6固定化膜によるC2C12細胞のアライメント、(2)硫酸化多糖類のオリゴ化と機能化、(3)TEMPO酸化ナノセルロースのECM利用、(4)キチン・キトサンナノファイバーによる細胞培養を実施し、以下の成果を得た。 1.細胞配列と機能発現:筋芽細胞C2C12をラフト構造化GlcNAc6固定膜で培養したところ、アクチンフィラメントのアライメントが起こり、明瞭な細胞配列が見られた。遺伝子発現解析の結果、筋芽細胞融合の兆候が見られた。 2.コンドロイチン硫酸(CS)膜:オリゴCS膜上でマウス由来神経幹細胞を培養したところ、分化誘導用のhorse serumなしでも分化促進が観察された。既存のTCPSとは明らかに異なる糖鎖バイオインターフェース機能が発現した。 3.ナノセルロース膜:生体内ECMの物理構造(剛直なナノファイバー)と化学構造(ヒアルロン酸に見られるカルボキシ基の繰り返し構造)の双方を模倣した膜を調製し、マウス皮膚細胞NIH-3T3を培養したところ、カルボキシ基量依存的な細胞接着が見られた。フィブロネクチンの吸着量に差がなく、糖鎖界面を直接認識している可能性が示唆された。 4.生理活性ナノファイバー膜:物理解繊したキチンナノファイバーと表面脱アセチル化したキトサンナノファイバーの複合膜を調製し、ヒト肝ガン細胞HepG2を培養したところ、有為な接着が見られなかった。以上の研究成果から、オリゴ糖鎖の集積状態(人為再現と天然ナノ構造)制御の重要性が改めて示唆されたため、次の最終年度においてこれらを総括し、幹細胞の多分化能と自己複製能をマテリアルが制御する未踏領域「グライコナノアーキテクトニクス」の研究基盤構築を目指す。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の独自戦略である「糖鎖分子鎖ベクトル制御によるナノ構造膜設計」については、セロオリゴ糖・キトオリゴ糖・コンドロイチン硫酸オリゴ糖を用いた自己組織化膜の調製に成功しており、筋肉前駆細胞や神経幹細胞の培養でユニークな特性を見出している。TLR2導入細胞株によるアッセイと機能評価はやや遅れているが、新たにナノセルロースの結晶構造と表面官能基量依存的な皮膚細胞の接着挙動を見出しており、グライコナノアーキテクトニクスの基盤構築に向けた新知見が得られている。さらに、筋肉前駆細胞については遺伝子・タンパク質の発現挙動解析も進めており、無血清培養に向けたデータも得られつつある。今後は、糖鎖マテリアル化学とバイオテクノロジーを融合させることで、界面ナノ構造と細胞の分化・未分化状態の相関性について詳細に研究する。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究の最重要課題である「糖鎖の界面ナノ構造が直接誘導する細胞機能」の発現と解明について、人為設計と天然構造の両面から本質に迫る研究を引き続き実施する。また、酵素反応によるヘテロ糖鎖合成については、本年度新規研究を行わなかったが、来年度は非水系反応場として非プロトン性極性溶媒に加えてイオン液体なども検討し、研究を進展させる。細胞解析については、既に一部導入しているRT-PCRによる遺伝子解析や免疫染色等によるタンパク質の発現解析をさらに推し進めることで、マテリアル界面の直接刺激による細胞内環境の変化を定量的に評価する。天然の糖鎖集積構造として本年度新たに取り入れたナノセルロースをはじめとする天然ナノマテリアルについても、細胞のバイオアッセイを積極的に取り入れることで、細胞形成・分化・機能と糖鎖ナノ界面構造との関係性を明らかにする。
|
Research Products
(8 results)