2014 Fiscal Year Annual Research Report
細胞壁へのリグニンモノマー供給を調節する輸送体・転写因子の同定⇒有用樹種開発へ
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26292097
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
堤 祐司 九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (30236921)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤田 弘毅 九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (90264100)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | リグニン / 生合成 / 細胞壁 / モノリグノール輸送体 / 転写因子 / 形質転換体 / 木質バイオマス |
Outline of Annual Research Achievements |
1)培養細胞の管状要素誘導系を用いた発現比較解析 シロイヌナズナ培養細胞T87株の管状要素化を試みたが、分化率が約5%前後と低く、遺伝子発現解析に適していないことが分かった。そこで分化率の向上を目指し、前培養および誘導に用いる培地組成の最適化を試みた。希釈MS培地(1/3MS)の前培養への適用は分化率を上昇させた一方、分化誘導における希釈MS培地の適用、スクロースの濃度(1~3%)は分化率に影響せず、ホウ酸の添加は予想に反し分化を阻害した。以上の結果、確立した分化率20%以上の培養系用い、選抜した9個のモノリグノール輸送体候補遺伝子について経時的な発現解析を行った結果、いずれも分化誘導後の遺伝子発現の上昇が認められ、その上昇パターンは4通りに分類された。培養細胞は分化誘導によってリグニン様物質が蓄積するが、モノリグノールは検出されなかった。そのため現在モノリグノール輸送時期の特定が課題となっている。なお、分化率の算出には、誘導後の細胞をフロログルシンよって染色し、染色された面積割合を画像処理に求めるハイスループットな算出方法を確立し、適用した。 2)レーザーマイクロダイセクション(LMD)による標的細胞の切り抜きおよびRNA抽出 二年生のポプラから、形成層帯および、木部繊維・導管組織をLMD法によって採取した。恒常的な発現が報告されているユビキチン遺伝子の発現を指標にして、リアルタイムPCRによる遺伝子発現解析に必要なRNAを得るために必要な採取面積について検討した。その結果、信頼できる定量性を確保するためには、形成層帯からは10 mm2、木部繊維・導管組織からは約20 mm2の面積(厚さ20μm)が必要であることが分かった。しかし、抽出したRNAには多糖類が混入しており、次世代シークエンスに適用するまでの品質には達していないため、精製法の検討が必要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初年度の目標であるT87培養細胞株の分化誘導系の確立に関しては、分化率に影響する複数の因子を把握し、分化率20%以上の分化誘導条件を確立したことから大筋計画通りに進行した。また、本培養系用い選抜した9個のモノリグノール輸送体候補遺伝子はいずれも分化誘導後の遺伝子発現の上昇が認められ、その上昇パターンを4通りに分類した。一方で、転写因子の検索においては十分に進んでおらず、達成度が低い。 レーザーマイクロダイゼクションにより取得した木化進行中組織からのRNA調製においては、計画当初の予想とは異なり、高純度のRNAを得ることが困難だったため、研究の進行が停滞している。
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Strategy for Future Research Activity |
培養細胞の分化誘導系の確立に関しては、管状要素分化率をさらに向上させることによる転写解析、発現タンパク解析の精度を高くするため、エストロゲンによって発現誘導が可能なベクターpER8のクローニングサイトに管状要素分化のマスター遺伝子であるVND6 遺伝子を挿入したコンストラクトを導入し、同調的分化誘導細胞系を確立した後に、輸送体候補の遺伝子の絞り混みならびに転写因子の検索を行う。また、同調的分化誘導細胞系からRNAを調製し、次世代シークエンサーによる転写解析も検討する。 レーザーマイクロダイゼクションにより取得した木化進行中組織からのRNA調製においては、引き続き高純度のRNAを得るための改善を検討すると同時に、複数のRNA増幅方法を検討する。一方で、ポプラおよびアラビドプシスの遺伝子データベースから、リグニン生合成遺伝子、モノリグノール輸送体候補遺伝子と転写因子について遺伝子共発現ネットワーク解析を行い、関連性を可視化することによって研究効率の向上を目指す。
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Research Products
(3 results)