2014 Fiscal Year Annual Research Report
魚類が示す筋肉の高い再生能力と成長能力を可能にする分子メカニズムを探る
Project/Area Number |
26292112
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
木下 滋晴 東京大学, 農学生命科学研究科, 准教授 (40401179)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 筋成長 / 魚類 / 終生成長 / ミオシン重鎖 / 筋衛星細胞 / プロモーター / 転写因子 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度はトラフグで孵化後の新生筋線維に特異的に発現するミオシン重鎖遺伝子のプロモーターを利用してゼブラフィッシュで当該プロモーター下流で蛍光タンパク質を発現するトランスジェニック系統を確立することができた。当該系統は、ゼブラフィッシュの筋形成おいて新生筋線維の形成が活発な領域で特異的に蛍光タンパク質を発現することを、組織学的に確認した。また、その時期の違いから、大型魚(トラフグ)と小型魚(ゼブラフィッシュ)の成長度の違いが生まれている可能性を示した。また、哺乳類では出生後の筋線維数はほぼ一定であるが、損傷を受けると修復のため新しく筋線維が作られ、そこでは一過的に胚型/新生児型ミオシン重鎖が発現する。さらに、この胚型/新生児型の発現には転写因子NFATが関わることがマウスで報告されている。本研究で用いたトラフグプロモーター内にもNFAT結合部位が3ヵ所存在することが確認され、これらを欠損することでプロモーター活性が有意に低下することがゼブラフィッシュでのin vivoレポーターアッセイで示された。以上の結果は、NFATが魚類における孵化後の筋線維数の増大に寄与する可能性を示す。本成果をMechanisms of Development誌に投稿し、受理された。 その他、本年度は筋衛星細胞の可視化を目的に、筋衛星細胞マーカーであるPax7の周辺領域をゼブラフィッシュゲノムDNAからPCRで増幅した。また、ゼブラフィッシュバイオリソースから、RW系統の若齢魚(1歳齢)と老齢魚(2歳6ヵ月齢)を入手し、次世代シーケンシング用のライブラリーを、筋肉、中枢神経、肝臓から構築した。また、トラフグ成魚骨格筋を用いて、メチローム解析を行い、筋形成におけるエピジェネティクス情報についての網羅的情報を取得した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度予定していた新生筋線維を可視化するトランスジェニック魚の確立を行うことができた。予想通り、当該トランスジェニック系統は新しく形成された筋線維で特異的に蛍光タンパク質を発現し、魚類筋肉の終生成長の良い解析系として使えるものと期待される。さらに、当該トランスジェニック系統を用いた解析から、魚類筋肉の終生成長に幾つかの特定の転写因子が寄与する可能性を示すことができ、これは予定以上の成果といえる。 また、筋衛星細胞の可視化を目的として、ゼブラフィッシュから筋衛星細胞のマーカーであるPax7の周辺配列を抽出したが、これを用いたトランスジェニック魚については、現在構築の途上である。また、予定していたゼブラフィッシュの幼魚~老成魚(2歳齢程度)の筋肉のRNAseqについて、RW系統の若齢魚と老齢魚から筋肉を含む幾つかの組織から全RNAを抽出し、cDNAライブラリーを構築した。 その他、予定にはなかったが、トラフグ骨格筋のメチローム解析を次世代シーケンサを用いて行った。エピジェネティックな制御は幹細胞制御において重要で、筋衛星細胞の増殖や分化にも関連する可能性がある。今年度、トラフグ成魚骨格筋のDNAメチル化について、網羅的な情報を取得した。 以上のように、研究はおおむね予定通り進行しており、一部予定以上の成果を挙げることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
筋衛星細胞や新生筋線維を可視化したトランスジェニック系統を用い、魚類の終生成長過程における筋形成の様子の観察と関連する遺伝子ネットワークの働きを調べる。ほ乳類ではGDF-11など幾つかの老化関連分子が新規で見つかってきており、それらの魚類における機能にも着目する。また、ゼブラフィッシュの幼魚~老成魚の筋肉を含む各組織のRNAライブラリーについて、次世代シーケンシングを行い、老化に伴う遺伝子発現プロファイルの変化の詳細を明らかにする。これら知見から魚類の終生成長関連分子の絞り込みを行い、CRISPR/casシステムを用いたゲノム編集や挿入的クロマチン免疫沈降法により、各遺伝子の機能解析や関連分子のスクリーニングを行う予定である。 また、トラフグなどの大型魚と小型魚であるゼブラフィッシュとの比較から、魚種による体サイズの違いと終生成長関連遺伝子の関連についても検討する。
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Research Products
(7 results)