2015 Fiscal Year Annual Research Report
土壌圏の有機物分解による窒素・炭素循環と水分・溶質・ガス移動の予測
Project/Area Number |
26292126
|
Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
取出 伸夫 三重大学, 生物資源学研究科, 教授 (70212074)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡辺 晋生 三重大学, 生物資源学研究科, 准教授 (10335151)
斎藤 広隆 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (70447514)
坂井 勝 三重大学, 生物資源学研究科, 講師 (70608934)
橋本 洋平 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (80436899)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 土壌圏 / 窒素循環 / 炭素循環 / 水循環 / シミュレーション / 不飽和水分移動 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度に引き続き,土中の窒素・炭素連結循環モデルを組み込んだ土中の水分・溶質移動シミュレーションプログラムの開発,不撹乱土ライシメータの農場への設置とモニタリングシステムの調整と検証,土カラム中の窒素成分移動実験,乾燥領域までの不飽和透水係数の高い精度の測定,植物根による吸水分布の推定に取り組んだ. PHREEQCプログラムを用いて構築した窒素・炭素循環モデルは,アンモニアの電離,硝化,CO2の溶解によるプロトン反応とイオン交換反応を加え,有機物分解に伴うpH変化を評価することに成功した.また窒素・炭素循環モデルを,HP1プログラムに適用し,水分移動の生じる土中において,有機物分解に伴う窒素と炭素の形態変化に加えて,pH分布の計算が可能となった.今後のより精度の高いpH推定には,土のpH緩衝能の評価が必要である.また,水田土を想定したFeとMnの鉱物と平衡する水溶液中において有機物分解が一次分解する還元過程の表現に成功した. 不撹乱土ライシメータは,下端からの排水を周囲と同じにする装置であるが,実験期間中にライシメータの下端よりも地下水位の上昇する条件が生じたが,適切な吸水により地下水上昇を再建できることが確認できた. 畑地を想定した土カラムの窒素成分移動実験では,土中水及び排出水のアンモニア,亜硝酸,硝酸濃度を測定し,それぞれのイオンの移動形態を把握することができた. 乾燥領域も含めた不飽和透水係数をより正確に評価するため,鏡面冷却式微小水ポテンシャルセンサーを用いた蒸発法による推定を検討した.また,植物を植えたポットおよび畑の水分分布の変化より,根による吸水強度分布の推定を行った.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
窒素・炭素循環モデルをHP1プログラムに適用し,水分不飽和の畑地土における窒素と炭素の形態変化,窒素成分の移動,炭酸ガスの移動に加えて,アンモニアの電離,硝化,CO2の溶解によるプロトン反応とイオン交換反応を加え,有機物分解に伴うpH変化を評価することに成功した.不撹乱土ライシメータは,地下水位がカラム下端より上部に存在して変動する条件においても適切に作動し,湿潤地域での蒸発速度の推定に有効であることを確認できた.今後は長期間の使用に向けて,防水機能の強化が課題である.畑地を想定した土カラムの窒素成分移動実験では,土中水及び排出水のアンモニア,亜硝酸,硝酸濃度を測定し,それぞれのイオンの移動形態を把握することができた.研究分担者がそれぞれの目標に対して確実に研究を進展することができた.
|
Strategy for Future Research Activity |
有機物分解に伴うpH変化の評価が可能となった窒素・炭素循環モデルに対して,土のpH緩衝能を表現する変異荷電モデルを組み合わせ,土により異なるpH変化の予測を可能とする.さらに,酸化還元反応を組み込み,有機物分解過程における溶存酸素,酸化還元電位,鉄やマンガンの形態変化のPHREEQCプログラムによるモデル化を行う.それにより,畑地や水田を対象としたより汎用的な窒素・炭素循環モデルの構築を行う.さらに,HP1プログラムと結合することにより,畑地や水田の窒素・炭素成分の移動の予測し,水分不飽和の畑土カラムや湛水した水田土カラム中の水分・溶質移動実験の解析を行う.また,蒸発速度の適切な推定が可能となったライシメータを用いて,土表面の蒸発速度,植物からの蒸散速度,根の吸水分布などの推定を行う.特に,乾燥領域までの不飽和透水係数の高い精度の測定を行うため,鏡面冷却式微小水ポテンシャルセンサーを用いた蒸発法に対して水蒸気移動も含めた水分移動式による不飽和透水係数の推定を行う.
|