2015 Fiscal Year Annual Research Report
人工マクロポアを利用した下方浸透促進による土壌・植生環境の修復と有機物貯留
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26292127
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
森 也寸志 岡山大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (80252899)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
金子 信博 横浜国立大学, 環境情報研究科(研究院), 教授 (30183271)
松本 真悟 島根大学, 生物資源科学部, 教授 (00346371)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 土壌物理 / 炭素固定 / 環境修復 / 浸透現象 / 劣化土壌 |
Outline of Annual Research Achievements |
土壌中の粗大間隙は水分・物質移動に大きく貢献するため,劣化土壌に人工的な粗大間隙(人工マクロポア)を設置することで,排水不良地の浸透能力を改善させる試みを行った.沖縄県石垣島のサトウキビ畑に人工マクロポアを導入し,1年後の有機物量の変動について観察し,人工マクロポアによる有機物の貯留とその分解可能性について検討する室内実験を併せて行った.圃場では全ての処理区で全炭素は増加し,普通栽培区と不耕起栽培区の表層を比較すると,人工マクロポア区の方で増加量が大きかった.表層ほど新鮮な有機物量の貢献が大きい傾向にあったが,人工マクロポアの効果を定量的に示すことはできなかった.次いでヘレショウセルを使って水,栄養塩,有機物を浸透させ,二次元的な移動・分解を精査した.すると人工マクロポアの下端部では浸透のバイパス効果を表すスポット的な浸潤部分が観察され,人工マクロポアの非設置部分では,浸潤域は表層にとどまった.その後の分解消失過程ではグルコースは水や無機塩類と異なり,土壌表層よりも人工マクロポア下端部において相対的に高い濃度を示した.有機物性の溶液と無機塩類が同時に土壌に与えられた場合,土壌のより深い部分に輸送された有機物は貯留されやすいと分かった.人工マクロポアのような下方浸透を促進する構造は,炭素貯留に貢献する可能性が示された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ヘレショウセルを使った実験で,有機物の分解は表層が多く,下方浸透が促進された状況下では土壌下部に浸透した有機物は分解されにくく,下方浸透の優位性が示されたから.また,新鮮な栄養塩と水の供給が分解に寄与するだけでなく,還元的状況になることでそれを防止している可能性が見えてきたから.
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Strategy for Future Research Activity |
ヘレショウセルを使った浸透実験では短期間で成果を観察することができたものの,この先はもう少し分解に時間がかかる材料を使用する必要があり,芳香族系の材料を用いた実験を行い,より現実的な分解過程を精査する予定である.あわせて,現地における経過観察を集中的に行い,最終的な成果を取りまとめる.
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Causes of Carryover |
H27年度に多数の試料を集中的に分析したため,効率よく経費を使用することができたから.またそれ故に下方浸透が有機物貯留に優位に働くことが明らかになった.その経費を最終年度に密になるであろうフィールドでの経過観察に回すことにしたため次年度使用としたから.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
継続する室内実験のとりまとめと,現地調査にかかる経費及び分析消耗品を中心に使用していく計画である.
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Research Products
(9 results)