2015 Fiscal Year Annual Research Report
生体材料の3次元構造解析とマルチスケール・マルチフィジックスシミュレーション
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26292135
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
田中 史彦 九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (30284912)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
内野 敏剛 九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (70134393)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | シミュレーション工学 / 農業工学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、貯蔵あるいは低温流通環境下に置かれた青果物の巨視的な諸現象とその内部で起きる細胞レベル・分子レベルでの諸現象を連成して予測するマルチスケール・シミュレーション法を確立することを目的とする。昨年度に引き続き、本年度は、(1) 青果物の貯蔵・輸送庫内の空調制御・力学シミュレーション、(2)X線CTによる青果物内部構造観察とマルチフィジックス・シミュレーション、(3) マイクロX線CTおよび共焦点レーザ顕微鏡による細胞組織の観察とマルチフィジックス・シミュレーション、(4) 分子動力学モデルによる青果物細胞膜のガス透過シミュレーションの4中課題について以下の研究を遂行した。まず、(1)については、20ftリーファーコンテナ内にエチレンを生成する積荷とエチレン感受性の高い積荷、エチレン分解装置を設置したモデルを構築して庫内のエチレン濃度を予測するシミュレーションを行い、これらの最適な配置法を決定した。つぎに、(2)については、温度15℃および25℃、相対湿度90%で貯蔵したキュウリの内部構造変化をX線CTによって観察し、見かけ密度や空隙率の変化をとらえ、水分の変化を予測した。つぎに、(3)については、リンゴのスライス画像を取得し、画像処理によって細胞間隙を抽出、3次元形状の再構築を行った。昨年度は10個の細胞組織で熱・ガス移動シミュレーションを行ったが、数百個レベルに拡大し、解の収束のためにメッシング手法とその評価に時間を費やした。その結果、従来使用していた八分木法よりデローニ法を用いる方がより健全なメッシュを得ることができることを明らかとした。次年度はこれを用いたシミュレーションを行い、拡散に係る諸物性値を決定して行く。最後に、(4)については、青果物の細胞膜のガス透過シミュレーションに必要な物性値について文献検索を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究計画では、4つの中課題のうち、おもに(1)~(3)までの中課題を中心に研究を進め、(4)については分子動力学シミュレーションに必要な物性値の収集に当たってきた。マクロスケールにおけるマルチフィジックス・シミュレーションを対象とする中課題(1)~(2)では、3次元熱物質移動モデルの構築はほぼ完了し、シミュレーションも順調に進展している。(3)のミクロスケールのシミュレーションでは、数種類の青果物についてμX線CTのマルチスライス画像から健全なメッシュ形状作成に至るまで、おおむね良好に進展している。昨年度問題となった、計算領域の拡大にも成功し、より精度の高い物性値の算出が可能となるものと期待できる。(4)については、研究が文献検索による物性値の収集、分子動力学ソフトの選定が完了した段階であり、総合的にはおおむね順調に研究が進展しているものと判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度に引き続き、4課題について研究を遂行する。(1)については、20ftリーファーコンテナ内の空調制御、積荷の配置等を変数パラメータするシミュレーションを実行し、より最適な設計指針を与える。(2)、(3)については、前年度のデータ取得の不足分を補うとともに、不均質構造に基づくシミュレーションモデルの構築と物性値の決定を行う。最後に、(4)については、シミュレータを選定し、他と統合する。
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Causes of Carryover |
分子動力学シミュレーションソフトならびに数値解析装置購入予算として、次年度使用額約200万円を繰り越した。平成26年度は基礎データ収集に時間を要し、本解析を行うに至らなかった。このため、平成27年度予算として繰り越すこととした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
分子動力学シミュレーションソフトならびに数値解析装置の購入費等に充てる。
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Research Products
(4 results)