2015 Fiscal Year Annual Research Report
ゲノム情報に基づくニワトリ・ブタの家禽化・家畜化起源探索と遺伝的分化の解明
Project/Area Number |
26292139
|
Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
西堀 正英 広島大学, 生物圏科学研究科, 准教授 (80237718)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山本 義雄 広島大学, 生物圏科学研究科, 名誉教授 (10032103)
万年 英之 神戸大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (20263395)
下桐 猛 鹿児島大学, 農学部, 准教授 (40315403)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | ゲノム / ニワトリ / ヤケイ / ブタ / イノシシ / 一塩基多型(SNP) / 分子系統樹 / ドメスティケーション |
Outline of Annual Research Achievements |
ニワトリとブタはヤケイとイノシシがそれぞれ家禽化,家畜化されたものである。その結果,多くの品種が作出され,それらを基に育種改良されてきた。しかしどこで家禽化,家畜化され,どのようなプロセスで品種分化が進んだのか。その解析結果は解析の対象とした遺伝子によって異なっている。本申請課題では,ニワトリとブタのそれぞれの近縁野生種,アジア在来集団および改良産業品種を対象に,ミトコンドリアDNAおよび複数のSNPsを用いて大規模に分子系統学的解析を実施した。加えて,新たな遺伝マーカーの導入を試みた。 本申請課題では,(1)ニワトリとブタSNPs解析システム(DigiTag2)およびミトゲノムを用いて分子系統樹を構築した。(2)SNPsタイピング結果から,ヤケイとニワトリ,イノシシとブタの各集団解析を実施した。(3)イノシシ,ブタの骨形態計測データを加えた。 その結果,1)イノシシ,ブタでは,その分子系統樹はそれぞれの集団毎に分岐,クレードを形成し,①アジアのイノシシと中国由来のブタ,②欧米のブタ集団に大別された。ニホンイノシシとリュウキュウイノシシ(RWB)は遺伝的に分離された。RWBは①沖縄本島,奄美大島,徳之島,加計呂麻島,②石垣島と西表島の大きく二分し,さらに各島々毎に6つにも分岐した。しかしRWBはラオス・カンボジア・ブータンのイノシシと近縁ではなかった。さらにRWBは他のブタ・イノシシと遺伝的に遠く, 特異的な集団構造をとることが明らかになった。2)ニワトリとヤケイの600個体以上のミトゲノム系統樹を構築し,61ハプロタイプを見出した。そのうち3つのハプログループがアフリカの在来鶏の由来であり,アフリカの在来鶏は北部地中海からと南部や中央アフリカを経由した2つのルートを経て移動した可能性が示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
以下の通り,研究計画を拡大し,その成果が期待以上に得られていることによる。以下にその詳細を記す。 琉球諸島にはリュウキュウイノシシ(RWB)が生息し,本土に生息するニホンイノシシ(JWB)とは形態が大きく異なる。本研究では, RWBの遺伝的多様性を調べるとともにJWBとの比較ゲノム解析ならびに形態計測を行い両イノシシ間で遺伝的に比較した。 【方法】次世代シークエンサー(HighSeq2500, Illumina)を用いて,RWBとJWBのゲノムDNA配列の解読を行った。形態は,第三大臼歯より年齢を推定し, 犬歯より雌雄判別を行い、口蓋裂および涙骨の観察および歯槽点からの全長、歯槽点からくぼみまでの全長および横幅の計測を行い,両イノシシ間の比較を行った。 【結果】RWBとJWBのゲノムシークエンスデータはそれぞれ4個体ずつで平均28Gbと26Gbのデータを得た。これらを現在解析中である。骨計測では,上顎が JWBと比較しRWBで有意に小さかった。また涙骨は, 石垣島・西表島のRWBはピストル型であるのに対し, その他のRWBおよびJWBは正方形型と台形型が存在した。口蓋列は西表島・石垣島のRWBで奄美大島のRWBよりも有意に大きい傾向にあり,遺伝マーカーとしての有用性の可能性が示唆された。 一方,ニワトリでは在来鶏(local/village chicken)を遺伝的に解析することで,世界のニワトリ遺伝子の移動を推定できることが示唆される結果を得られ,これを活用してさらに解析を進める。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成28年度中に,SNPsおよびミトゲノム情報によりニワトリおよびブタのドラフト分子系統樹を構築し,グローバル分子系統の作製を試みるとともに形態計測データを利用した系統推定を法の構築を試みる。
SNPs分子系統樹を保証するためのミトゲノム分子系統樹を構築するとともに形態計測データを遺伝マーカとして分子系統樹を保証するシステムを構築する。ニワトリとヤケイ,ブタとイノシシのミトゲノムD-loopの全塩基配列の決定については,広島大学で研究代表者・西堀および協力者の大学院生・竹内佳子,荒谷友美,本間香帆で実施する。ニワトリおよびブタSNPsの解析は,引き続き,神戸大学・鹿児島大学で実施する。平成28年度中に,SNPs情報によりニワトリおよびブタの詳細な分子系統樹を構築する。あわせてミトゲノムD-loop全塩基配列を用いたグローバル分子系統樹を構築する。広島大学においてイノシシ,ブタ,ヤケイ,ニワトリの形態計測情報の収集を行い,それらの分析を実施する。
|
Causes of Carryover |
次年度使用額(c-d)で,444,634円生じた理由は,次年度新たに解析を試みた形態形質マーカーの利用においてその有効性が明確になったため,イノシシ,ブタ,ニワトリ,ヤケイの博物館資料(標本)からの情報を収集できることからその調査旅費として次年度使用のために保持したためである。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額(c-d)で,444,634円生じた理由は,次年度新たに解析を試みた形態形質マーカーの利用においてその有効性が明確になったため,イノシシ,ブタ,ニワトリ,ヤケイの博物館資料(標本)からの情報を収集できることからその調査旅費として次年度使用のために保持したためであることから,次年度に世界の博物館資料をサーチし,その資料収集旅費として円滑かつ合目的に使用する計画である。
|
Research Products
(12 results)