2015 Fiscal Year Annual Research Report
血液型乳酸菌を用いた炎症性腸疾患を防止する新機能性ヨーグルトの構築と応用
Project/Area Number |
26292143
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
齋藤 忠夫 東北大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (00118358)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
北澤 春樹 東北大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (10204885)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | プロバイオティクス / 潰瘍性大腸炎 / 乳酸菌 / ビフィズス菌 / 硫酸基還元菌 / スルファターゼ / Bacteroides / 競合阻害 |
Outline of Annual Research Achievements |
わが国では、近年大腸がんに加えて潰瘍性大腸炎(UC)やクローン病(CD)などの炎症性腸疾患の患者数は、とくに若年層に急増しており、その原因は不明であり大きな問題となっている。著者はこれまで乳糖不耐症を予防する乳酸菌、免疫刺激性のある乳酸菌、抗菌性ペプチドで有害菌を排除する乳酸菌などを用いたヨーグルトを研究してきた。その過程で、ヒト腸管付着性をバイオセンサーBiacoreという機器で選抜する新しい手法を開発し、世界で初めてABO式血液型を認識する血液型乳酸菌をヒト腸管から発見した。本研究は、この高いヒト腸管付着性を示す血液型乳酸菌を用いて、UCの原因菌とされる各種有害菌を、血液型別の競合阻害により排除することで予防や寛解を可能とする新機能性ヨーグルトを構築し、疾病を予防することで最終的な目的としている。平成26年度の初年度には、UC患者では硫酸基還元菌に対して硫酸基を提供するBacteroidesのスルファターゼ高活性菌にとくに注目し、これらの腸管付着性をすでに研究室で単離しているヒト大腸ムチン硫酸基に結合性の高い乳酸菌やビフィズス菌で競合阻害または排除か置換を狙っての基礎的な検討を行い、大きな成果を得た。平成27年度には、UC有害菌でありスルファターゼを産生するBacteroides spp.がヒト腸内において特にスルフォムチンの硫酸基を認識していること、これらの菌の可溶性に誘導したヒト大腸ムチン(sHCM-A)への付着性試験を実施し、高い付着性を示す2菌株を選抜することが出来た。さらに、この2菌株は大腸内での硫酸基を結合するかスルフォムチンの硫酸基を認識して結合することが解明された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
潰瘍性大腸炎(UC)の手術例は、本学の東北大学病院ではあまり多くはない。しかし、昨年度の平成27年度には、比較的手術例が多く、患者からの大腸ムチンを入手する機会が多く、粘液からの嫌気性菌の単離技術も向上したので、予想よりも多くの貴重な菌体を単離することに成功した。とくに、硫酸基還元菌自体はスルファターゼ活性を持たず、周囲のBacteroidesがこの酵素活性によりヒト大腸ムチンより菌体バリアーとしての硫酸基を除去してしまうことが予想されている。この機能解明には、実際の患者さんからの試料供給が不可欠であるので、今後もこの点が研究のネックとなってくるだろうと考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は本申請研究の3年目の最終年度となり、まとめの年度となる。これまでの実験研究成果をきちんと整理して進展させたい。実験全体は順調に推移しており、偏性嫌気性菌である硫酸基還元菌の培養施設体制も完備し、硫酸基還元菌とビフィズス菌の培養が容易となっている。最終年度は、これまで単離した硫酸基を強く認識して結合する血液型乳酸菌やビフィズス菌を用いて、硫酸基還元菌に硫酸基を供与するBacteroidesを腸内排除できるシステムを構築させたい。
|
Causes of Carryover |
初期の想定した物品費において、とくにBiacore解析における一番高価なセンサーチップの使用量が節約できたことが一番大きい因子となった。これは、事前にさらに新しい手法により、使用菌株を事前に絞り込むことに成功したことにも起因する。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
今後のより正確な実験手法の確立のためには、最新式の安全キャビネットの購入が急務となった。しかし、農学研究科は平成28年10月から青葉山キャンパスへの移転があるので、実際の購入は11月を希望しており、それまでは現在の機器により急場をしのぐことにしたい。
|