2014 Fiscal Year Annual Research Report
動物自然発生腫瘍に対するマイクロバブル併用超音波照射による実用的な新規がん治療
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26292155
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
滝口 満喜 北海道大学, (連合)獣医学研究科, 教授 (70261336)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中村 健介 北海道大学, (連合)獣医学研究科, 助教 (80625898)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 獣医学 / トランスレーショナルリサーチ / 超音波治療 / マイクロバブル / 膀胱がん / 甲状腺がん |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、診断用超音波技術は目覚ましい進歩を遂げ、超音波診断は画像診断のモダリティとして日常診療の中で不可欠な診断手法となった。それは超音波が生体にとって比較的非侵襲的で、かつリアルタイムに体内臓器を表示観察できるといった利便性に依るところが大きい。その一方で、超音波は加熱作用、機械的作用および化学的作用を有しており、これらのエネルギーを利用した超音波治療への期待は大きい。したがって、超音波治療の応用研究は、診断と治療の融合を促進する斬新で画期的な研究領域であるといえる。本研究ではがんに対する新たな治療戦略として、マイクロバブルを利用した超音波薬物治療の動物自然発生腫瘍への応用を目指し、実用可能な治療法としての基盤を築くことを目的とする。 今年度はまず、実際の腫瘍担癌犬への超音波治療に先立ち、犬甲状腺癌細胞マウス皮下移植腫瘍モデルにおいて、腫瘍成長抑制効果ならびに安全性の検証を行った。マウスを対照群、シスプラチン単独投与群、シスプラチン+マイクロバブル投与群、シスプラチン投与+超音波照射群、シスプラチン+マイクロバブル投与+超音波照射群(ソノポレーション群)の5群(それぞれn =6)に分け、5×106個の犬甲状腺癌細胞を7週齢のヌードマウス皮下に接種、腫瘍径が5 mmに到達したら実験を開始した。超音波診断装置で腫瘍を可視化しながらシスプラチン(1μg)とソナゾイド(総量20 microl)を腫瘍内に30G針を用いて投与し、同時に超音波を照射(MI 1.6、15秒)した。超音波治療は1日おきに計4回行い、最終照射(6日目)後、6日毎に24日目まで腫瘍径を計測して腫瘍体積を算出した。その結果、ソノポレーション群でのみ有意な腫瘍成長抑制効果を示し、マウスへの安全性も問題ないことが確認された。これは、今後の臨床例への応用に向けた基盤形成に極めて重要な知見となる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、当初の研究計画通り、犬甲状腺癌細胞マウス皮下移植腫瘍モデルにおける腫瘍成長抑制効果ならびに安全性の確認を検証することができたことから、概ね順調に進展しているとの判断に至った。
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Strategy for Future Research Activity |
膀胱はある意味体外臓器であり、膀胱内に抗がん剤を注入して行う超音波治療は全身臓器への副作用がないことからも、超音波治療にとっては理想的な状況といえる。今年度は、膀胱癌への超音波治療を見据えた実験を中心に行う。ヒト膀胱がん細胞マウス膀胱内移植モデルにおけるマイクロバブルを用いた超音波治療に先立ち、動物福祉の観点から動物実験前に実験条件の最適化を行うことで無駄な動物実験を削減することを目的として、膀胱腫瘍組織を模した3次元腫瘍細胞培養系を確立する。次いで、この3次元培養系を用いて抗がん剤としてのシスプラチン濃度ならびに超音波照射条件の最適化を検討する。実験条件の最適化が終了した後に、in vivoモデルでの検証を行う予定である。
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Causes of Carryover |
当初は平成26年度に造影超音波検査用プローブの購入を予定していたが、別経費(病院経費)により購入が可能となったことから、本経費での支出がなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年4月にオランダで国際超音波治療シンポジウムが開催されたが、その旅費と参加日(2名分)を計上する。また、培養細胞を用いた実験に使用する超音波照射システムの構築に必要な高周波増幅器の導入費用にあてる。
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