2015 Fiscal Year Annual Research Report
犬の変性性脊髄症、髄膜組織球性肉腫および多発性筋炎の病理発生解明と疾患モデル開発
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26292157
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
内田 和幸 東京大学, 農学生命科学研究科, 准教授 (10223554)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | イヌ / ウェルシュ・コーギー / 組織球性肉腫 / 変性性脊髄症 / 炎症性筋疾患 |
Outline of Annual Research Achievements |
犬の組織球性肉腫54例をCNS原発組織球性肉腫 (n = 23)と非CNS原発組織球性肉腫(n = 31)の2群に分類し、臨床事項について回顧的に検証するとともに病理組織学的ならびに免疫組織科学的に検索した。検討の結果、CNS組織球性肉腫は、ペンブローク・ウェルシュ・コーギーに有意に多く、一方非CNS組織球性肉腫はフラット・コーテッド・レトリーバーに多く認められた。免疫組織化学的に腫瘍細胞におけるDC/マクロファージマーカーの発現状態を検索したところ、全54例でHLA-DR, Iba-1およびCD204に腫瘍細が陽性であり、CD163(42例)、lysozyme(22例)、S100(17例)、およびCD208(25例)に陽性の腫瘍細胞が確認された。これらのマーカーの発現状況の検討からCNS織球性肉腫は高頻度にマクロファージマーカーを発現し、非CNS組織球性肉腫はDCマーカーを発現する傾向があった。また、CNS原発と非CNS原発組織球性肉腫の基本的な組織形態は類似しているものの、腫瘍細胞の分裂活性は、CNS原発組織球性肉腫で有意に高く(P<0.05)、その生物学的挙動が非CNS組織球性肉腫と比較して悪性CNS組織球性肉腫に由来するcell line (PWC-HS01)と関節原発組織球性肉腫に由来するcell line (FCR-HS02)をそれぞれ樹立し、その定性を行った。細胞形態に株間で相違はなかったが、免疫組織化的にはPWC-HS01はCD204(マクロファージマーカー)を発現しているのに対し、FCR-HS02では発現が認められなかった。以上よりPWC-HS01はマクロファージとDCのいずれの細胞にも分化可能な未分化細胞であり、FCR-HS02はDC分化が決定づけられた細胞であることが明らかになった。SCIDマウスへの移植試験ではいずれの細胞株もマウスへの移植が可能であり原発腫瘍の組織学特徴を反映した腫瘤を形成するとともに、いずれも転移能を有していることが確認された。以上よりこの2種の細胞株は、組織性肉腫の由来の研究や治療薬開発に貴重なツールとなることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
組織球性肉腫については、当初の予定より多くの知見が得られ、コーギー犬以外の犬種の組織球性肉腫のcell lineも確立できた。学術雑誌への報告や海外学会への報告など順調に情報の開示も実施できている。 変性性脊髄症については新規症例も蓄積され、末梢神経や筋肉病変に対する検索が実施されており概ね順調に研究は進行している。 炎症性筋疾患については、コーギー犬の新規症例の検索機会がなく、治療や予後の情報のみが収集された。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は特に研究成果が多い組織球性肉腫の腫瘍化に関する分子情報に関する知見を得たいと考えている。関連研究により、代表的な組織球性肉腫であるフラット・コーテッドレトリバーの滑膜原発の組織球性肉腫、および皮膚ランゲルハンス細胞性組織球症の培養細胞系を確立することができたため、今後は、これらのcell lineを用いて、その生物学的動向の相違や細胞の増殖や転移に関連する分子の相違について検証する予定である。 変性性脊髄症については、中枢神経系の検討を一旦終了し、研究対象を末梢神経と筋組織の病変に集中して成果を得たいと考えている。 炎症性筋症については、新規症例が現在ほとんど見られないことから、モデル系の開発については一時中断し、より汎用性のある多発性筋炎モデルを開発したいと考えている。
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