2016 Fiscal Year Annual Research Report
哺乳類減数分裂における染色体高次構造の制御メカニズム
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26292169
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
李 智博 神戸大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (50372660)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松田 厚志 国立研究開発法人情報通信研究機構, その他部局等, 研究員 (20585723)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 減数分裂 / コヒーシン / コンデンシン / 染色体 / 卵母細胞 / 精母細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、染色体の高次構造の制御に関わるコヒーシンやコンデンシン、シナプトネマ複合体関連タンパク質などの解析を通して、減数分裂における相同染色体の対合・組換えの分子機構を解明することを目的としている。減数分裂やその後の初期発生において、染色体の高次構造と遺伝子発現の関連性についても探求している。本年度は、高分解能光学顕微鏡システム3D-SIMを利用して、コヒーシンサブユニットRAD21LとREC8のシナプトネマ複合体内における局在を調べ、両者は共にlateral elementsとtransverse filamentsを媒介するように局在するが、RAD21Lの方がより中心側に位置することを明らかにし、論文として発表した。また、減数分裂特異的なコヒーシンサブユニットRAD21Lを体細胞において異所発現した時の影響も調べた。RAD21Lを異所発現した細胞では、間期の核内において相同染色体の距離が近づくという興味深い現象が見られた。RAD21LのN末端欠失により他のコヒーシンサブユニットと複合体を形成できなくすると、異所発現による影響が消えてしまうため、前述の現象はコヒーシン複合体の形成に依存していると考えられた。これらの結果も論文としてまとめている。また、コンデンシンIのサブユニットCAP-Hをコンディショナルにノックアウトした卵母細胞を野生型の精子と受精させた前核期杯において、雌雄前核におけるエピジェネティック修飾状態について調べたが、CAP-Hノックアウトによる影響は見られなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コヒーシンのゲノムワイドな位置情報の解析はサブユニット毎に異なる抗体を用いる方法では、シグナルの特異性の判別は難しく、進展が見られていない。また、コンデンシンの生殖細胞におけるコンディショナルノックアウトは、ノックアウト効率が完全ではないため、抗体を利用した免疫組織染色法によりシグナルを観察してノックアウト効率を調べる必要があるが、組織における免疫染色のシグナルの特異性の判別に難があり、当初の予定通りには研究が進んでいない。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究課題として、まず第一に、RAD21Lの異所発現による相同染色体の距離が接近するという現象が実際に相同染色体の結合によるものかどうか、分裂期の細胞を観察することにより明らかにする。また、コンデンシンIは卵母細胞の成熟過程に必要ないとの結論が卵母細胞特異的なCAP-Hのノックアウト実験により導き出されているが、その卵母細胞においてCAP-Hタンパク質が残っている可能性がある。そのチェックをまず行い、タンパク質が残っていれば、そのタンパク質を枯渇するような実験系の作出を試みる。
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