2014 Fiscal Year Annual Research Report
ミカンキジラミから見つかった「オルガネラ様防衛共生体」の基盤解析
Project/Area Number |
26292174
|
Research Institution | Toyohashi University of Technology |
Principal Investigator |
中鉢 淳 豊橋技術科学大学, エレクトロニクス先端融合研究所, 准教授 (40332267)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | ミカンキジラミ / Profftella / 共生細菌叢 / アンプリコン解析 / ディアフォリン / 生物活性 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度の主な成果として、I)キジラミ28種の共生細菌叢の解明、II)生物系統間で異なるディアフォリン感受性の解明、が挙げられる。Iは、キジラミの虫体全体より抽出したゲノムDNAを鋳型とし、16S rRNA遺伝子の可変領域V3, V4を増幅対象としたアンプリコン解析によるもので、シーケンシングには、次世代シーケンサーMiSeq(illumina社)を用いた。当該キジラミ全種から必須栄養共生体Candidatus Carsonella ruddii (Gammaproteobacteria)が検出された一方、種ごとで細菌叢に大きな差異が認められた。オルガネラ様防衛共生体Candidatus Profftella armatura (Betaproteobacteria)の姉妹系統と目される細菌の検出に成功するとともに、キジラミ以外の昆虫グループの必須共生細菌や植物病原細菌の姉妹系統、抗生物質等の産生が期待される放線菌類など、多様な共生細菌群を見出した。IIについては、ミカンキジラミより抽出したディアフォリン、およびその類縁体であるペデリンを用い、大腸菌(Escherichia coli JM109株)、出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae BY4741株)、昆虫培養細胞Sf9、昆虫生体(Acyrthosiphon pisum ISO系統)に対する活性を評価した。いずれの化合物についても、哺乳類細胞に毒性を示す濃度を十分に上回る濃度においても、大腸菌や酵母の増殖に対する影響は認められなかったが、Sf9細胞や昆虫生体に対しては、低濃度で顕著な毒性を示した。このことから、ディアフォリンは、真正細菌や真菌といった潜在的な昆虫病原体よりは、捕食性節足動物に対して有効な防衛毒である可能性が示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究計画では、以下の解析を行うこととしている。 解析1:Profftella姉妹種の探索と比較ゲノム解析/解析2:ミカンキジラミ体内でのProfftellaの感染・増殖動態の解析/解析3:Profftellaの選択的除去による防衛機能の検証/解析4:ディアフォリンの局在解析、およびキジラミ個体別濃度解析/解析5:ディアフォリンの抗がん効果の検証
平成26年度は、解析1の前半部として、キジラミ28種について16S rRNA遺伝子を対象としたアンプリコン解析を行い、その多様な共生細菌叢を明らかにした。今回、主要な探索対象としているオルガネラ様防衛共生体Candidatus Profftella armatura (Betaproteobacteria)の姉妹系統と目される細菌の検出に成功するとともに、キジラミ以外の昆虫グループの必須共生細菌や植物病原細菌の姉妹系統、抗生物質等の産生が期待される放線菌類など、多様な共生細菌群を検出し、今後の研究の飛躍的な発展に資する基盤データを得ることが出来た。これらのうち、一部については、すでにゲノム解析にも着手している。また、解析5に関連して、ディアフォリンおよびその類縁体であるペデリンの生物活性について解析を行い、対象生物の系統により、活性が大きく異なることを明らかにした。解析2-4についても、その準備が整いつつある。以上のことから、本研究計画は、おおむね順調に進展していると判断される。
|
Strategy for Future Research Activity |
解析1については、これまでに、Profftella姉妹系統と目される細菌を複数のキジラミ種から検出することに成功したが、ミカンキジラミの場合と異なり、いずれもそれぞれの昆虫の共生細菌叢においてマイノリティーらしく、共生器官内に安定的に維持されている可能性は高くないものと推察される。また、キジラミ以外の昆虫グループの必須共生細菌や植物病原細菌の姉妹系統、抗生物質等の産生が期待される放線菌類など、興味深い共生細菌が多数検出されている。これらについて、まずFISHを行い、その局在情報に基づいて標的共生細菌を単離した上で、ゲノム解析を進めて行く予定である。解析2については、各発生段階のミカンキジラミを用い、ProfftellaおよびCarsonellaの16S rRNA遺伝子を標的としたリアルタイム定量PCRおよびFISHを行うことにより、これら共生細菌の増殖・感染動態の解明を目指す。解析3については、各種抗生物質をミカンキジラミに投与することで、Profftellaの選択的除去を試みる。抗生物質処理の効果の検証は、Profftella特異的なプライマーを用いた診断PCRやリアルタイム定量PCRにより行う。本研究項目は不確実性が高いため、抗生物質処理の効果が思わしくない場合は、深追いせず、他の項目に研究資源を振分ける。解析4については、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)や飛行時間質量分析(TOF-MS)、MS-イメージング装置により、ミカンキジラミ体内におけるディアフォリンの局在および濃度分布を調査する。解析5については、これまで精製、集積した試料を用いて、39種の「ヒトがん細胞パネル(肺がん7系、胃がん6系、大腸がん5系、卵巣がん5系、脳腫瘍6系、乳がん5系、腎がん2系、前立腺がん2系およびメラノーマ1系から成る。)」によるin vitro評価を行う。
|
Causes of Carryover |
年度末に不足額が生じないよう、慎重な予算執行を心がけたため。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
各種消耗品などに使用予定。
|
Research Products
(6 results)