2014 Fiscal Year Annual Research Report
脱皮ホルモンの消失が休眠を誘導し耐寒性を強める分子機構-遺伝子カスケード-の解明
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26292179
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Research Institution | National Institute of Agrobiological Sciences |
Principal Investigator |
神村 学 独立行政法人農業生物資源研究所, 昆虫成長制御研究ユニット, 主任研究員 (60370649)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
後藤 慎介 大阪市立大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (70347483)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 休眠 / 脱皮ホルモン |
Outline of Annual Research Achievements |
脱皮ホルモンの役割は、昆虫の脱皮・変態を引き起こすことだけではない。申請者は最近、脱皮ホルモン濃度を人為的に下げることにより、オオワタノメイガに幼虫休眠を誘導して、耐寒性を付与することに成功した。しかし、そのメカニズムの詳細は不明である。そこで本研究では、脱皮ホルモンの消失が休眠を誘導し耐寒性を強くする分子機構を解明することを目的として、①オオワタノメイガの休眠誘導過程で特異的に発現する遺伝子を探索した後、②遺伝子導入実験により休眠や耐寒性に実際に関与する遺伝子を同定し、さらに、③生理・生化学的解析等によりそれらの遺伝子産物の機能を明らかにする。以上の解析により、いずれの昆虫でも詳しいことが全くわかっていない休眠誘導、耐寒性獲得の遺伝子カスケードを解明することを目指す。 本研究の初年度にあたる2014年度は、このE22O処理による耐寒性強化機構についてより詳しく調べた。短日中温条件で飼育したさまざまなステージの幼虫の耐寒性を調べたところ、終齢摂食期までは耐寒性が低く0℃におくと2~3週間以内に死亡したが、ワンダリング期になると耐寒性が高くなり始め、1日経って老熟幼虫になるとほぼ全ての個体が0℃で数ヶ月以上生存できるようになった。一方、長日高温条件で飼育した虫はどの時期でも耐寒性が低かった。しかし、老熟幼虫にE22Oを注射すると成長が止まり、1日以内に急速に耐寒性が高まった。また、E22O処理後10日ほどすると、過冷却点も通常の休眠虫並みに低くなった。 さらに、非休眠虫、休眠虫およびE22O注射による人為的休眠虫の間で発現遺伝子プロフィールをRNA-seq解析により比較することにより、環境条件による休眠誘導とE22O注射による休眠誘導の両者で共通して発現誘導される遺伝子を多数見いだすことができた。これらの中に、休眠誘導、耐寒性強化に関与する遺伝子が含まれていると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画で予定していた、生理学研究とRNA-seqによるトランスクリプトーム解析の両方を達成することができたので。
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Strategy for Future Research Activity |
当初計画に従い、2014年度に単離した、休眠が誘導されて耐寒性が高まる過程で特異的に発現する遺伝子について、発現プラスミドを構築する。次に、構築した発現プラスミドをリポフェクション法によりオオワタノメイガの非休眠虫に導入してその遺伝子を発現させた後に、成長が遅れて蛹化しなくなるか、また、低温においた時に生存期間がのびるかを調べることにより、発現させた遺伝子が休眠誘導や耐寒性強化に実際に関わっているかどうかを調べる。
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Causes of Carryover |
RNA-seq解析が予想よりやや安く行うことができ、また、最終的に適任者がおらず、実験補助員を雇わなかったから。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
昨年度のRNA-seq解析で若干解析したり無かった点があるので、繰り越した金額はほぼ全てRNA-seq解析に回す。
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Research Products
(1 results)