2014 Fiscal Year Annual Research Report
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26293004
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
新藤 充 九州大学, 先導物質化学研究所, 教授 (40226345)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 有機合成化学 / イノラート / トリプチセン / 全合成 / アルカロイド |
Outline of Annual Research Achievements |
イノラートとベンザインとのトリプル環化付加反応による9-ヒドロキシトリプチセンの合成について検討した。ベンザインの生成法ではリチウムハロゲン交換法ではトリプチセンの収率は30%前後にとどまった。副生するブロモブタン由来の副生成物等が収率低下の原因と考えられたので、フッ化ベンゼンを原料とするオルトリチオ化法に変えたところ、収率は40%前後と若干改善された。次にm-フルオロアニソールを原料とするベンザインをイノラートと反応させたところシン置換トリプチセンが最高69%で選択的に得られた。酸素置換基による誘起効果によりレジオ選択的な付加反応が進行したと考えられる。そこでイノラートのアルキル置換基を種々変換したところ、嵩高いイソプロピル基やフェニル基でもトリプチセンが得られた。しかしt-ブチル基では反応は進行しなかった。 イノラートの特性を活用したステモナミンの合成研究を行った。原料となる不斉4級炭素を含むBoc-プロリン誘導体の合成では、文献記載の方法では大量合成での収率の再現性に問題があったため改良を施し、特にクエン酸による中和が特に効果的であることが分かった。光学活性ヒドロキシラクトンの原料にL-リンゴ酸およびD-リンゴ酸を用いて分子内アシル置換反応による7員環合成を試みた。L-リンゴ酸の場合、環化させたときヘミアセタール構造となり開環のために工程数が余分にかかったが、D-リンゴ酸ではヘミアセタールが開環しヒドロキシラクタムが直接得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
イノラートとベンザインのトリプル付加環化反応の条件を詳細に検討し60%程度まで挙げることができた。また非対称ベンザインへの選択的付加も見出した。以上の成果はイノラートと炭素炭素多重結合との付加環化の初めての例であるとともに、その可能性を拡大した点で順調な研究進展と考えた。またステモナミンの合成に関しては原料の大量合成法の目途をつけることができた。全合成の達成が近づいたと考えられ、研究の進展度合いは順調と見なされる。
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Strategy for Future Research Activity |
9-ヒドロキシトリプチセンの合成の展開を図る。多様なベンザインを基質として本反応の適用限界を探る。フローリアクターを用いた合成も検討し、ベンゾシクロブテノンやアントラセノール中間体の捕捉や、収率の改善を図る。 ステモナミンのエナンチオ選択的全合成の達成を目指す。ABC環の構築は既定方針通りに進める。D環の構築はβ―ケトエステルの酸化方法を検討する。
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Causes of Carryover |
機器のメンテナンスに伴う消耗品の購入を先延ばしにしたことで、本年度よりも次年度により経費が必要となることが最大の理由である。また少量の消耗品を用いる先端実験を前倒しで行い、大量の試薬を用いる原料合成実験を後ろ倒しにしたことも一因である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究の進展を加速させるために研究補助員を臨時に雇用すること、先延ばしにした機器のメンテナンスに伴う消耗品の購入、大量合成のための試薬購入に充てる。
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Research Products
(17 results)