2014 Fiscal Year Annual Research Report
ABHファミリーによるRNAエピジェネティクス制御と癌における制御破綻機構の解明
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26293015
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
辻川 和丈 大阪大学, 薬学研究科(研究院), 教授 (10207376)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 薬学 / エピジェネティクス / 癌 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.癌細胞のABH3ノックダウンによるRNA塩基メチル化レベルの変動解析と、それに伴う癌細胞の表現型ならびに網羅的遺伝子発現の解析:膵癌細胞株Panc-1, Mia-Paca-2におけるABH3ノックダウンは、細胞増殖抑制とアポトーシスを誘導した。その作用機序として、1-metnyladenosine (1-meA)、3-methylcytosine(3-meC)、さらに200塩基以下のRNA(tRNA/miRNA)画分においては、N6-methyladenosineのレベル上昇に伴うと推測される新生タンパク質の翻訳抑制作用が認められた。さらにABH3ノックダウン膵癌細胞における網羅的遺伝子発現解析により、DNA損傷や翻訳等のカテゴリーに属する遺伝子群の特徴的で顕著な発現抑制がみられた。 2.癌臨床検体におけるABHファミリー分子の発現とRNAメチル化レベルの解析:非小細胞肺癌、膵癌、腎癌、膀胱癌等の臨床検体におけるABHファミリー分子mRNAの定量的解析をreal-time PCRにより行った。その結果、ABH4やABH6が非小細胞肺癌で、ABH8が膀胱癌で、ABH9は腎癌で特徴的高発現することが分かった。さらに肺癌CTOSや肺癌細胞株においてもABH4/6の発現が認められた。肺癌細胞株におけるABH4/6のノックダウンは細胞増殖の抑制を示したことから、これらABHファミリー分子は肺癌細胞の生存、増殖に重要な役割を果たしていることを推測させた。 3:Gene editing技術を用いたABHファミリー分子ノックアウト正常細胞株の作製:CRISPR/Casによるgene editingを行うためABH3のノックアウトコンストラクトを作製して、膵癌細胞でのgene editingを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、膵癌、非小細胞肺癌、泌尿器科癌に焦点を当て、ABH3やABHファミリー分子がRNA塩基のメチル化レベルを攪乱し、それがタンパク質の発現異常をもたらす結果、癌の発生や悪性化が惹起されることを示すものである。その目的達成のため本年度は、癌臨床検体におけるABHファミリー分子の発現を定量的に解析して癌腫との関係を示すことができた。また癌細胞株を用いた解析によってもABHファミリー分子の特徴的発現を示すことができた。よって今後のABHファミリー分子と癌との関係解明への道筋が出来た。 ABH3に関してはその発現抑制によりRNAの1-meA, 3-meC, N6-meAレベルの上昇と新生タンパク質翻訳抑制との関係を示し、ABH3 発現癌細胞においてABH3がRNAエピジェネティクス制御により癌細胞の増殖や生存に関わることを明らかにした。 正常細胞におけるRNA修飾の意義とその制御機構がRNAエピジェネティクスという概念の確立に必要不可欠となる。今年度の成果として、ABHファミリー分子のノックダウン、ノックアウト、高発現系を確立することができたことは、本年度の癌細胞を用いた研究と関連させ、次年度以降の研究進展に繋がるものと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
DNAのメチル化・脱メチル化による遺伝子発現制御機構が近年大きな注目を浴び、遺伝子変異だけではない遺伝子発現制御異常に伴う癌発症・悪性化との関係が推測されている。さらにヒストンの修飾とともにエピジェネティクスという概念が確立され、その異常な制御を標的とした癌の分子標的治療薬の創成もなされている。申請者はDNAエピジェネティクスとともにRNAエピジェネティクスも存在すると考え、その制御に関わる分子としてABHファミリー分子の可能性検証を開始した。臨床癌や癌細胞におけるABHファミリー分子の発現とその機能解析も開始し、今後RNAエピジェネティクス制御異常と癌化や癌の悪性化の機序を明確にすべく研究を進める計画である。 さらに正常細胞におけるRNAエピジェネティクスの重要性とその制御機構の解明も重要となる。RNAにはメチル化と共に塩基に種々の修飾がなされている。そこでそれらの修飾を網羅的かつ定量的に解析できる技術の確立が必要となる。それらの技術と遺伝子改変マウスや正常細胞株、さらにはiPS細胞等を利用して正常細胞の機能や分化とRNAエピジェネティクスとの関係を解析する。それら解析結果は癌の新たな治療薬創成にも大きな足跡を与えると期待できる。
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Causes of Carryover |
今年度3-methylcytosineモノクローナル抗体を作製し、その評価を行った結果、特異性を検証できた。さらに1-methyladenosine抗体も市販されるようになり、その特異性の評価も完了した。そこで次年度の予算と総合し、これら抗体を用いてRNA免疫沈降し、次世代シークエンサーを用いた網羅的解析することを計画した。これによりABHファミリー分子を介したRNAレベルでのこれらメチル化制御が明らかになると期待できる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
ABHファミリー分子のノックダウン、高発現細胞からRNAを抽出し、3-methylcytosine抗体、 1-methyladenosine抗体によるRNA免疫沈降を行う。その後、次世代シークエンサーを用いて網羅的RNAレベルでの3-methylcytosine、1-methyladenosine含有mRNA, tRNA等の情報を集積する。さらにそれらのメチル化レベルと癌細胞のタンパク質レベルとの相関性評価へとつなげる計画である。
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Research Products
(7 results)
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[Presentation] ABH3のRNA脱メチル化を介したタンパク質翻訳制御機構の解明2015
Author(s)
河口恵, 上田裕子, 北惠郁緒里, 仲井秀一, 大塩郁幹, 小林巧明, 神宮司健太郎, 深田宗一朗, 青木俊二, 馬淵美雪, 田中明人, 辻川和丈
Organizer
日本薬学会第135年会
Place of Presentation
兵庫医療大学(神戸)
Year and Date
2015-03-27
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