2015 Fiscal Year Annual Research Report
活性酸素感受性TRPチャネルによる痛み・しびれの発生および慢性化機構の解明
Project/Area Number |
26293019
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中川 貴之 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (30303845)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 薬理学 / 疼痛 / しびれ / TRPチャネル / 活性酸素種 / 感覚神経 / 抗がん剤誘発末梢神経障害 / シュワン細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
白金系抗がん剤オキサリプラチンによる急性末梢神経障害の発症機構として、昨年度までに、ROS産生とROS感受性TRPA1のN末端システイン残基の関与を明らかにしてきたが、本年度はさらに、オキサリプラチンの代謝物oxalateが酸素感受性プロリン水酸化酵素(PHD)の酵素活性を抑制し、TRPA1のN末端プロリン残基(Pro394)の定常時の水酸化が解除されることにより、ROSに対するTRPA1の感受性が顕著に増強されることを見出した。さらに、マウス後肢の虚血/再灌流によるしびれモデルにおいても、TRPV1ではなく、ROS感受性が最も高いTRPA1が選択的に関与することを見出した。その分子機構として、オキサリプラチンと同様に、低酸素負荷によるPHD活性抑制によるTRPA1 Pro394の水酸化解除によりTRPA1が過敏化することを見出し、再灌流時に産生されるROSが過敏化したTRPA1を刺激することにより、痛みに近いしびれ行動が惹起されることを明らかにした。 一方、抗がん剤がシュワン細胞に直接的に与える影響を検討するため、in vitro実験系として、昨年度までに初代シュワン細胞培養を確立してきた。本年度はさらに、感覚神経(DRG神経)との共培養系およびDRG組織片培養系を確立し、抗がん剤(タキサン系、白金系)の効果を検討したところ、神経細胞に対する影響よりも優先的にシュワン細胞への影響(MBP発現低下/脱髄)が認められた。さらに、マウスモデルにおいてもシュワン細胞の脱分化(p75/ガレクチン3陽性)を確認した。 また、我々が独自に開発した過酸化水素の膀胱内注入により誘発される慢性膀胱炎モデルを用いて、ROS感受性TRPA1の膀胱内での変化を確認したところ、TRPA1の顕著な増加とTRPM2の増加が認められた。また、TRPA1遺伝子欠損マウスでは、初期の排尿回数増加の減少が認められた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、主に感覚神経に発現し最も酸化感受性が高いTRPチャネルとして知られているTRPA1に着目した検討が中心となった。特に、オキサリプラチンに特徴的な副作用である急性末梢神経障害時の冷過敏応答と、正座直後の強いしびれを模したマウス後肢虚血/再灌流モデルを用いた行動解析および変異型TRPA1を用いた分子細胞生物学的解析から、TRPA1のオキサリプラチン代謝物あるいは低酸素によるTRPA1のROSに対する過敏化機構を、1つのアミノ酸(Peo394)の脱水酸化という機構まで同定することができ、当初計画以上に進展したと考えられる。ただし、本年度中に開始する予定であったTRPA1 Pro394をAlaに置換した遺伝子改変マウスの作成は、PHDのTRPA1認識部位となる394番目のPro周辺のアミノ酸残基を探索し、よりよい変異型を探索する必要性が考えられたため、pendingしている。 また、抗がん剤や糖尿病による末梢神経障害の発症機構にシュワン細胞への影響を、シュワン細胞/DRG神経共培養系を検討したところ、予想以上にシュワン細胞への影響が優先的に発現し、シュワン細胞を発症の原因とした仮説が立証できたと考えており、新たな治療戦略の開発を含め、非常に興味深いデータが出てきている。一方、本年度もシュワン細胞に発現するROS感受性TRPチャネルの関与の同定には至っておらず、本研究課題の進行としてはやや遅れている。 過酸化水素誘発新規慢性膀胱炎モデルを用いた研究計画については、ROS感受性TRPチャネルの発現変動、およびその遺伝子欠損マウスを用いた検討を実施し、TRPM2およびTRPA1とも、ほぼ予想通りの結果が得られたことから、本研究課題は概ね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は特にTRPA1のROSに対する過敏化機構を重点的に解析したため、平成28年度に予定していた計画を前倒しで実施することができたため、本年度はTRPA1の冷感受性に対するROSの関与という研究計画には記載していなかったが、本研究課題と密接に関連する内容について検討する。 また、しびれモデルとして、本年度は正座直後のしびれを模したマウス後肢虚血/再灌流モデルを用いたが、より病態的なしびれに近い、永続的な下肢虚血モデル、糖尿病性末梢神経障害モデルや抗がん剤誘発末梢神経障害に伴う末梢血流障害モデルを用い、ROS感受性TRPチャネル、特にTRPA1との関与を検討する。 他の研究計画についても概ね順調に進行していることから、今後も当初計画通りに研究を実施する。
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Causes of Carryover |
僅かな金額(944円)が使用できなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の消耗品として使用する。
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Remarks |
しびれ発症の分子機構にTRPA1が関与することをプレスリリース。京都新聞3月18日25面、産経新聞3月18日夕刊 10面、毎日新聞3月26日30面に掲載、共同通信社、J-CASTニュース他多数にWEB掲載。
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[Journal Article] Hypoxia-induced sensitization of TRPA1 in painful dysesthesia evoked by transient hindlimb ischemia/reperfusion in mice.2016
Author(s)
So K, Tei Y, Zhao M, Miyake T, Hiyama H, Shirakawa H, Imai S, Mori Y, Nakagawa T, Matsubara K, Kaneko S
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Journal Title
Scientific Reports
Volume: 6
Pages: 23261
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Acknowledgement Compliant
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