2014 Fiscal Year Annual Research Report
ビス(ビベンジル)型天然物は新たな膜障害性抗MRSA薬となり得るか!
Project/Area Number |
26293027
|
Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
宮地 弘幸 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (20376643)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
常盤 広明 立教大学, 理学部, 教授 (10221433)
黒田 照夫 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 准教授 (80304327)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | MRSA / 抗MRSA薬 / ビス(ビベンジル) / リカルディン / 膜障害 / イソプラジオチン / 分子動力学シミュレーション法 |
Outline of Annual Research Achievements |
【化学面】コケ由来大環状ビス(ビベンジル)型天然物には,イソプラジオチン型やマルカンチン型化合物も報告されている。平成26年度はイソプラジオチン型化合物合成を行い,抗MRSA活性を測定した。1,3-置換体がこれまでの誘導体中最も強く,既存抗MRSA薬と同等以上の活性を示した。一方で,1,4-置換体は抗MRSA活性を全く示さなかった。これらの結果から,ビス(ビベンジル)型天然物は,リカルディン型のみでは無く,他の大環状ビス(ビベンジル)型でも抗MRSA活性を示すことを発見した。また非環状のペロテチンにも中程度の活性を認めた。今回合成した,イソプラジオチン型化合物に関して,エチジウムブロマイドの菌体内外の流入・流出および菌体内外イオン濃度測定を行った。その結果,1,3-置換体,1,2-置換体において,EtBrの流入,流出が確認された。膜障害に伴う菌内のイオン濃度変化が観測された。 【計算化学面】平成26年度は,非環状分子について解析を行い,さらには分子間の弱い相互作用を取り込んだ解析を実施した。高活性化合物では分子間π-πスタッキングが見られ、安定な多量体を形成することが理論的に示唆された。 【生物活性面】RCの作用で、物質の透過性が増大することを確認した。また,細胞内Na+濃度はRCにより増大し,一方で細胞内K+濃度は減少することを確認した。RCは,細胞膜に何らかの障害を与えていることで様々な物質の透過性を上昇させ,抗菌活性を示すことが示唆された。羊赤血球を用いて、RCの溶血活性を測定した。その結果,MRSAに対するMICの10倍の濃度を加えても溶血活性は少ししか上昇しないことを見出した。走査型電子顕微鏡観察で枯草菌ではRC処理で表面構造の変化が認められた。グラム陰性菌のRND型多剤排出ポンプの遺伝子を破壊した腸炎ビブリオ株では、抗菌活性が見られるようになった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成26年度計画外である,非環状のビス(ビベンジル)の合成法を確立し、天然物ペロテチンの合成を完了させた。さらに非環状構造においても中程度の抗MRSA活性を示すことを見出した。これらの化合物はオリゴマーとして化成を示す可能性が計算化学の結果示唆された。さらに、大環状ビス(ビベンジル)はグラム陰性菌には抗菌化成を示さなかったが、これが多剤排出ポンプから排出される可能性が生物実験でしめされた。これらの結果は予想外の知見であり,平成26年度計画以上の進捗と判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
【化学面】非環状化合物が本当に大環状化合物と同質、同分子標的に結合して抗MRSA活性を示すのか,合成化学的に検討と分枝標的のケミカルバイオロジー手法を用いた同定。 【計算化学面】従来までの構造活性相関とは一線を画し、候補化合物の構造柔軟性を考慮したMRSA活性発現構造部分の理論的予測を行い、実験に先駆けた化合物の設計を行う。細胞膜や細胞壁を標的とした候補化合物群の作用をサイズアップしたシミュレーションで3次元可視化を行うことにより、実際の化合物がどのよう細胞膜、細胞壁に作用するのか理論的に明らかにしていく。 【生物活性面】非環状化合物が本当に大環状化合物と同質、同分子標的に結合して抗MRSA活性を示すのか,生化学的に検討。 分枝標的のケミカルバイオロジー手法を用いた同定。トランスポゾン挿入株を用いて、RC耐性にかかわる腸炎ビブリオの遺伝子を同定する。MRSAや腸炎ビブリオの細胞膜のLipidから作成したリポソームを用いて、Na+やK+の漏出実験を行う。 標的がLipidであれば、当該細菌の種々のLipidとの結合活性を評価する。標的がLipidでない場合は、タンパク質である可能性が高い。そこで、当該細菌の細胞膜分画を単離し、結合するタンパク質の同定を進める。
|
Causes of Carryover |
大環状ビス(ビベンジル)誘導体の膜障害性を確認する実験を複数う予定が、一つの実験に使用する、全学共通機器の修理点検が入ったため使用できなかったため。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度に、器機が使用可能になり次第必要薬品類を購入し、私用代金の支払いを行って実験を実施する。
|