2014 Fiscal Year Annual Research Report
ゲフィチニブ耐性非小細胞肺がんに有効なEGFRチロシンキナーゼ阻害剤の開発
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26293028
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
岩尾 正倫 長崎大学, 工学研究科, 教授 (00100892)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福田 勉 長崎大学, 工学研究科, 助教 (80295097)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 非小細胞肺がん / 薬剤耐性変異 / EGFR-TKI / ゲフィチニブ / ラメラリン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、強力なキナーゼ阻害剤である海洋天然物ラメラリンNの構造改変により薬剤耐性変異非小細胞肺がんに有効な EGFRチロシンキナーゼ阻害剤を開発することである。今年度は、下記の研究成果を得た。 ① 研究室所有のラメラリンライブラリーの検索から、Lam 03が、酵素レベルにおいて、正常細胞に存在する野生型EGFR WTを阻害せず、薬剤耐性変異EGFR T790/L858Rを高選択的に阻害することを見出した。さらに細胞レベルでの活性評価を進めた結果、Lam 03は、EGFR WTの自己リン酸化は阻害せず、T790M/L858R の自己リン酸化のみを選択的に阻害することも明らかになった。 ② 引き続き、Lam 03がT790M/L858R に対して選択性を示す原因を探るために、Lam 03のT790/L858Rに対するドッキングシミュレーションを行った。その結果、ATP結合ポケットの開口部(親水性領域)に配向したLam 03のA環部の特異な構造が、各EGFRの開口部の構造の微妙な違いを認識し、T790M/L858Rに対して選択性を発現しているものと予想された。 ③ そこで、水にほとんど溶解しないLam 03の物性の改善も視野に入れ、A環部に多様な水溶性置換基を持つ誘導体を複数合成し、活性評価を行った。その結果、いくつかの水溶性誘導体は、Lam 03と同程度の活性を保持していることが明らかになった。また、T790/L858Rに対する選択性も保持していた。 ④ ラメラリンNは、DNAの切断・再結合を触媒するトポイソメラーゼIを強く阻害する。トポイソメラーゼIは、キナーゼ阻害剤にとってはオフターゲットであり、新規誘導体についてもトポイソメラーゼI阻害活性が懸念された。そこで、がん研究会に依頼し、39系ヒトがん細胞パネルを用いたコンペアアッセイを行った。その結果、今回合成した水溶性化合物については、既存のトポイソメラーゼI阻害剤との相関は認められずトポイソメラーゼI阻害活性は消失していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
創薬研究においては、特定の標的分子に対する高い活性と選択性を併せ持つ化合物を創出する必要がある。また、薬剤として生体に投与するためには、水に対する充分な溶解性を持たせる必要がある。初年度の研究では、ラメラリン骨格のA環部の合成展開により、薬剤耐性変異EGFR (T790M/L858R) に対する高活性と選択性を有する水溶性誘導体の創出に成功した。また、それら水溶性誘導体はオフ・ターゲットのトポイソメラーゼ I に対する阻害活性はないものと、予想された。これらの成果は、実験動物を用いたin vivo評価も可能にするものであり、研究は当初の計画以上に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度の研究により、ラメラリンのA環部に水溶性官能基を導入してもEGFR 阻害活性は保持されることが明らかになった。しかしながら、ヒット化合物Lam 03に比較するとEGFR (T790M/L858R) に対する選択性は低下する傾向にあった。今年度は、さらに高い活性と選択性を持つラメラリンアナローグを創出するために、ラメラリン骨格のE環部およびF環部での合成展開を行う。また、ラメラリンのラクトン環をラクタム環に置換したアザラメラリンも合成し、評価する。 一方、昨年度創出した水溶性誘導体については、細部レベルでの自己リン酸化抑制ならびに細胞増殖抑制活性評価を行う。また、オフ・ターゲットのトポイソメラーゼ I については、プラスミドDNAのリラクセーション・アッセイにより、阻害活性がないことを確認する。
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Causes of Carryover |
当初予定よりも物品費および人件費・謝金が節約できたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当初予定していた使用計画に加え、中圧クロマトグラフィー用の特殊な光学活性カラムを購入する。
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Research Products
(13 results)