2015 Fiscal Year Annual Research Report
ヒトiPS細胞の肝細胞及び腸管上皮細胞への分化と初回通過効果予測モデル系の構築
Project/Area Number |
26293036
|
Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
松永 民秀 名古屋市立大学, 薬学研究科(研究院), 教授 (40209581)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大森 栄 信州大学, 医学部附属病院, 教授 (70169069)
永田 清 東北薬科大学, 薬学部, 教授 (80189133)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 薬物動態学 / 人工多能性幹細胞 / 分化誘導 / 腸管上皮細胞 / 肝細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒト人工多能性幹細胞(iPS細胞)を用いて、薬物動態試験に利用可能な腸管上皮細胞の作製を目指して研究を進めており、本年度はより機能性を有した腸管上皮細胞への分化誘導法の開発と作製した腸管上皮細胞の薬物動態学的特性について解析した。より機能性を有した腸管上皮細胞への分化誘導法の開発においては、分化に有用な新たな低分子化合物を見出すことができた。新たに見出した低分子化合物を用いて分化誘導したヒトiPS細胞由来腸管上皮細胞は、従来の方法で作製した細胞と比較して薬物代謝酵素(CYP3A4、UGT1A1、UGT1A4)及び薬物トランスポーター(MDR1、BCRP、PEPT1)のmRNA発現が顕著に増加した。また、rifampicinによるCYP3A4の誘導に関わるプレグナンX受容体(PXR)のmRNA発現も顕著に増加した。この細胞を用いて薬物誘導能の評価を行ったところ、1α,25-dihydroxyvitamin D3のみならずrifampicinにおいてもCYP3A4 mRNAの発現が顕著に誘導された。さらに、CYP3A4活性、取り込みおよび排泄トランスポーターを介した薬物輸送能も有していた。 また、ヒトiPS細胞由来肝細胞の成熟化に向けた検討においては、分化に有用な添加因子の探索を行った。その結果、複数の因子を見出し、これらを肝細胞への分化誘導時に用いることで、主要な薬物代謝酵素であるCYP3A4をはじめとしたいくつかの薬物代謝酵素の発現上昇が認められた。また、rifampicinを添加することで、PXRを介したCYP3A4の発現誘導も認められた。 以上のことから、新たに見出した低分子化合物はヒトiPS細胞の腸管上皮細胞への分化誘導に有用であり、その細胞は薬物動態および誘導の評価に利用可能であることが示唆された。また、ヒトiPS細胞由来肝細胞においても、より成熟した細胞の作製が可能であることが示された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ヒトiPS細胞由来腸管上皮細胞の機能解析を行った結果、今回開発した分化誘導法により得られた細胞は、現在多用されているCaco-2細胞を上回る機能を有していることが明らかとなった。その成果は特許出願中である。また、ヒトiPS細胞由来肝細胞においても分化誘導法を改良し、これまでと比べより成熟化し、高い機能を有した細胞を得ることが可能となった。これらの成果は、最終目標とする初回通過効果予測モデル系構築にとって重要な材料であることから、これらの開発が予想通りに開発できたことは、最終目標達成にとって大きな前進である。ヒトiPS細胞由来肝細胞及び腸管上皮細胞を用いて初回通過効果を評価する系については、デバイスを設計しており現在検討中である。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでに確立した方法により分化誘導したヒトiPS細胞由来肝細胞及び腸管上皮細胞を用いて初回通過効果を評価するモデル系の構築について検討を行う。また、創薬研究において広く用いられるように、保存法、腸管並びに肝幹細胞の単離・保存法について検討を行う。さらに、ヒトiPS細胞由来肝細胞及び腸管上皮細胞の分化誘導については、より機能を有した細胞を得る方法を開発する。
|
Research Products
(14 results)