2015 Fiscal Year Annual Research Report
記憶の長期保持に関わる新規代謝型受容体とスプライシング異型による分泌蛋白の解析
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26293044
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Research Institution | National Institute for Physiological Sciences |
Principal Investigator |
久保 義弘 生理学研究所, 分子生理研究系, 教授 (80211887)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
今野 幸太郎 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (20599641)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 代謝型受容体 / オーファン受容体 |
Outline of Annual Research Achievements |
Prrt3は、リガンド未知のG蛋白質結合型受容体である。その生理機能を明らかにすることを目的として、以下の研究を実施した。 1. リガンドの同定は最重要事項だが、代謝型受容体の場合、カップルするG蛋白質の種類により出力が異なるため、検出方法を変えなければならない。そのため、カップルするG蛋白質の種類の同定も鍵となる。先に、免疫共沈タンパク質の質量分析の結果、Gi/oタンパク質が同定されたので、エフェクターとしてGi/oタンパク質で活性化されるGIRKチャネルを用いて、その電流増加を指標に、多数のリガンド候補物質の効果を解析した。その結果、ムスカリニックアセチルコリン受容体のアゴニストである Oxo-Mによって、小さいながらも確実な応答が観察された。生理的神経伝達物質であるアセチルコリンやムスカリンでは活性化はみられなかったため、生理的リガンドを同定できたわけではない。しかし、この結果は、Prrt3が機能的にGi/oタンパク質にカップルしうるという、今後のスクリーンングにおいて重要な情報である。 2. 京都大学上杉教授より、1000 種以上の生体内分子のライブラリーを分与いただいた。GIRKチャネル電流の増加を指標に現在このライブラリーのスクリーニングを開始した。来年度にかけてすべての分子について解析する。 3. 本研究では大脳特異的遺伝子破壊ホモマウスを用いた行動解析の実施を目的の一つとしているが、生存率が低く行動解析に必要な数の確保が難航していた。今年度、規模を拡大して交配を重ね、ようやく行動解析の実施が可能な数の個体を確保することができた。 4. 発現部位がシナプス前終末か、シナプス後部位かを明らかにするために2重染色による免疫組織化学解析を行い、主として、VGluT1の発現するグルタミン酸作動性神経細胞のシナプス前終末に発現していることが確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
リガンド不明のオーファン代謝型受容体であるため、リガンドの同定が最大の課題であった。出力となるG蛋白質がGi であること、そのため、GIRKチャネル電流の増加として捉えうることが明らかになったのは、大きな進展だったと認識している。また、Oxo-Mが、生理的リガンドではないが、Prrt3を活性化しGIRK電流の増加を引き起こすことが観察されたのも、今後の研究の展開のヒントとなる重要な知見である。生存率が低く個体数の確保が困難だった遺伝子破壊ホモマウスを、行動実験を可能とする個体をようやく確保できたのも着実な進展と考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
1. 生理的リガンドの同定に向けての、生体内小分子ライブラリーの約1,000分子の未解析分の、電気生理学的手法によるスクリーニングを継続する。候補物質が同定されたところで、さらにその関連物質等のスクリーニングおよび機能解析を行う。 2. 行動解析の実施に充分な数の、大脳興奮性神経細胞特異的にPrrt3遺伝子を破壊した条件的遺伝子破壊マウスを得ることができたので、これを用い、網羅的行動解析を行う。さらにそのフェノタイプを踏まえて、条件的遺伝子破壊ホモマウスとコントロールマウスの脳スライス標本を用いて、着目する脳部位のシナプス伝達の比較解析を行う。 3. 神経細胞内での局在の詳細を明らかにするために、免疫電顕法による高解像度での解析を行う。併せてVGluT1抗体等を用いた2重標識法による解析も行う。
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Causes of Carryover |
大脳特異的遺伝子破壊マウスの生存率が非常に低く、予定していた行動解析実験に必要な数の個体の確保に時間を用し、実験が来年度に繰り越しとなったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度末にようやく行動解析に必要な個体数を確保できたため、来年度前半に、次年度使用額と新規請求分を併せて、行動解析実験およびその他の実験を実施する。
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Research Products
(1 results)