2014 Fiscal Year Annual Research Report
心筋組織修復における細胞動態の解明と新規治療標的の探索
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26293054
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
藤尾 慈 大阪大学, 薬学研究科(研究院), 教授 (20359839)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
毛利 友美 大阪大学, 薬学研究科(研究院), 研究員 (20572960)
中山 博之 大阪大学, 薬学研究科(研究院), 准教授 (40581062)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 心血管・血液 / 心筋 / 炎症 / 再生 |
Outline of Annual Research Achievements |
従来、哺乳類成獣の心臓は再生能が極めて低い臓器とされてきた。しかしながら、臨床的には、傷害を受けた心臓が構造的・機能的に回復する現象はしばしば認められる。例えば、ウイルス性心筋炎のほとんどの症例では、炎症極期には心筋組織が著しく傷害を受け心機能が低下するが、炎症が終息するに伴い心筋傷害は自然治癒する。本研究では、ウイルス性心筋炎の炎症反応の動物モデルとされるマウス実験的自己免疫性心筋炎(Experimental Autoimmune Myocarditis, EAM)モデルを用いて、心筋組織の炎症からの回復機構を検討してきた。その結果、これまで、以下のことが明らかになった; ①EAMは、雄性Balb/cマウスに、ミオシン重鎖ペプチドを1週間おきに2回免疫することにより作製した。このモデルにおいては、1回目免疫後3週目に炎症の極期を迎え、心エコー上心機能が低下するとともに、組織学的にも心筋細胞の萎縮、細胞外基質の集積が認められた。その後、炎症が終息するに従って、心筋細胞が再び整然と配列するようになり、細胞外基質が消失し、心機能も改善した。このことから、EAMが心筋組織炎症からの回復機構の研究に適したモデルとなり得ることが確認された。 ②心筋炎症の極期においては、心筋細胞保護シグナルであるSTAT3が心筋細胞内で活性化されることを見出した。その時心筋組織内では、IL-11、LIFなどのSTAT3を活性化するIL-6ファミリーサイトカインの発現が上昇していることを見出した。 ③心筋細胞特異的にSTAT3遺伝子を欠失させたマウスを用いてEAMを作製すると、コントロールマウスと比して、心機能の回復が認められず、組織学的にも心筋組織の線維化が進展することを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、心筋組織の内因性修復能を追究するというこれまでに例を見ない研究であり、炎症による心筋組織傷害からの回復機構の解明を目的としている。上述のように、心筋炎症の極期に心筋細胞内においてSTAT3シグナルが活性化されること、さらに、STAT3遺伝子を心筋細胞特異的に欠損(KO)させることにより、心筋組織の回復機構が破綻することを見出した。このことは、炎症からの心筋組織再生において重要なシグナル伝達系を同定した事を意味し、本研究のキーとなる部分を達成したことになる。特にEAMはBalb/cでは誘導できるもののB6系では発症誘導できない。心筋特異的STAT3 KOマウス作製に用いたSTAT3 floxマウス、心筋特異的タモシキフェン誘導性Cre recombinaseトランスジェニックマウスはいずれもB6からBalb/cへとバッククロスしたものであり、約3年間の準備によって達成できた成果であることを強調したい。その観点から、おおむね順調に進展していると判断できる。 現在、心筋特異的STAT3KOマウスとコントロールマウスを比較することにより、心筋細胞保護、心筋細胞増殖に関するSTAT3の重要性を検証しており、ポジティブなデータを得つつある。
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Strategy for Future Research Activity |
EAMの回復期における心筋細胞、心筋組織幹細胞の細胞動態を検討する。 ①心筋細胞の動態:心筋特異的タモキシフェン誘導性Cre recombinaseトランスジェニックマウスとインディケーターマウスを交配し、タモキシフェンを投与して心筋細胞をラベリングする。その後EAMを誘導し、pre-existingな心筋細胞の組織修復への寄与度を検討する。また、心筋組織修復期にBrdUを投与し、心筋組織内の増殖細胞の由来を検討する。 ②萎縮した心筋細胞の形態学的回復機構の解明:EAM極期から回復期に至る過程において発現増強するタンパク質をプロテオミクス解析により探索し、細胞骨格タンパクのひとつであるモエシンが発現増強することを見出している。モエシンを発現するアデノウイルスベクター作製し、in vitro、in vivoにおいて遺伝子導入を行い、心筋組織回復におけるモエシンの重要性を検討する。 ③心筋組織幹細胞の動態:マウスに5-FUを投与することにより心筋組織から幹細胞を除去できることが知られている。我々は、既にEAMを誘導することにより、心筋組織幹細胞が増加することを見出している。マウスにEAMを誘導後、5-FUを投与し心筋組織幹細胞を除去し、EAMからの回復における心筋組織幹細胞の重要性を明らかにする。 ④特に①において、心筋細胞の増殖が確認された場合、その分子機構を明らかにし、心筋細胞の増殖技術の開発を目指す。
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Causes of Carryover |
次年度使用額187円は、物品購入時の端数として生じた。次年度に使用することで、1サンプルでも多くのデータを得ることが可能となるなど、少しでも無駄なく有効に使用するため次年度使用とした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
先述のとおり、次年度の使用計画としては、EAMの回復期における心筋細胞、心筋組織幹細胞の細胞動態を検討する。具体的には、①Cell fate mapping法による心筋細胞の動態、②萎縮した心筋細胞の形態学的回復機構の解明、③心筋組織幹細胞の動態、④心筋細胞の増殖の分子機構の解明と、心筋細胞の増殖技術の開発を目指す。次年度使用分と合わせて使用することで、1サンプルでも多くの信頼性が高いデータを得ることに努めたい。
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Research Products
(9 results)
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[Journal Article] The inhibition of N-glycosylation of glycoprotein 130 molecule abolishes STAT3 activation by IL-6 family cytokines in cultured cardiac myocytes.2014
Author(s)
Matsuo, R., Morihara, H., Mohri, T., Murasawa, S., Takewaki, K., Nakayama, H., Maeda, M., Fujio, Y.
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Journal Title
PloS One
Volume: 8
Pages: e78961
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Acknowledgement Compliant
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