2015 Fiscal Year Annual Research Report
飢餓時のタンパク質合成に及ぼす細胞内分解系オートファジーの役割
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26293060
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
水島 昇 東京大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (10353434)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | オートファジー / 細胞内分解 / タンパク質合成 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、栄養飢餓時に誘導されるオートファジーの代謝生理学的意義を哺乳動物で明らかにすることを目的としている。これまで、ポリソームプロファイリング法およびピューロマイシンの取り込みによる新規タンパク質合成率の解析から、オートファジー不全であるAtg5欠損肝で飢餓時のタンパク質合成が低下することを明らかにした。そこで、次にどのようなタンパク質の合成にオートファジーが必要かを検討することとした。この目的のために、飢餓で転写が誘導されることが知られているいくつかの因子について調べたところ、これらにはオートファジーの有無で大きな差が見られなかった。そこで、翻訳レベルの変動を調べるために、飢餓時の肝からポリソームが結合する度合いに応じてmRNAを7分画にわけて採取し、それぞれについて代表的遺伝子の定量的RT-PCR法を行った。各mRNAの存在量はリボソームの量で補正した。その結果、飢餓による翻訳の変動は、必ずしも転写の変動とは一致しないことが示唆された。そこで、タンパク質レベルでの変動を直接調べるために、肝特異的ATG5欠損マウスと野生型マウスの肝臓からタンパク質を抽出後、ジメチルラベル法を用いた質量分析法によって相対的比較を行った。これまでの予備的解析からは、オートファジー能の有無によって飢餓時の存在量に差が生じうるタンパク質種があることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題では、タンパク質合成全体の解析から、個々のタンパク質の各論に入ることを計画している。本年はその2年目になるが、すでに質量分析による個別タンパク質の解析に着手しており、順調に経過していると判断している。今後その絞り込みを行うことで、最終的な目標に到達することを目指したい。本計画に参画している大学院生1名も積極的に取り組んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度はタンパク質合成に及ぼすオートファジーの総合的な影響を検討するために、以下の3つを予定している。 1.飢餓時かつオートファジー依存的にリボゾーム密度が高くなるmRNAの同定。 これまでの解析から、全mRNAレベルの増減がかならずしも翻訳の活性と相関しないことが示された。そこで、肝臓抽出液のポリソームを7フラクションに分画後、翻訳活性の高いmRNAを採取し、マイクロアレイ解析によって翻訳活性の低いmRNAとの比較を行う。 2.野生型とオートファジー欠損肝のプロテオーム解析をさらに進め、オートファジー依存的に翻訳されるタンパク質群の再現性をとる。得られた結果のうち、代表的なものに関してはウェスタンブロット法によって直接タンパク質量の変化を確認する。 3.上記の1と2を総合して、タンパク質量の変化における転写と翻訳の変化の相対的貢献度を算出し、オートファジーによるアミノ酸供給の個体レベルでの重要性を明らかにする。
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Causes of Carryover |
本年度マイクロアレイ解析を行う予定であったが、採取すべきポリソームのフラクションをあらかじめ詳しく検討する方が効率よいと判断した。そのため、より安価な実験を優先して行うことになり、その差の費用が未使用額として生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度にマイクロアレイ解析を行うとともに、予定している質量分析を用いた個別タンパク質研究の規模を大きくし網羅性を高めた解析を行うこととしたため、それらの費用に充てる予定である。
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Research Products
(4 results)