2014 Fiscal Year Annual Research Report
新規アルツハイマー病創薬ターゲットによる神経細胞死メカニズム解明とその阻止
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26293075
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Research Institution | Foundation for Biomedical Research and Innovation |
Principal Investigator |
星 美奈子 公益財団法人先端医療振興財団, その他部局等, 研究員 (30374010)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
廣明 秀一 名古屋大学, その他の研究科, 教授 (10336589)
大西 隆之 公益財団法人先端医療振興財団, その他部局等, 研究員 (30418959)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 構造解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
アルツハイマー病は、シナプス変性を経て成熟神経細胞が死に至り初めて発症する。βアミロイド(Aβ)集合体(2量体・12量体)は、NMDA受容体を障害しシナプスを変性するが神経細胞死は起こさない。従って、成熟神経細胞死を誘導する原因分子とそのメカニズムを解明し、その上に治療法を開発することが必要とされている。 申請者は、患者脳に蓄積する様々なAβ集合体の中から、初めてヒト成熟神経細胞に死をもたらすAβ集合体「アミロスフェロイド(ASPD)」を単離し(JBC2009等)、最近、ASPDがあるシナプス膜タンパク質に結合し毒性を発揮することを見出した。 本研究は、ASPDターゲット分子の機能解明により、アルツハイマー病で起こる成熟神経細胞死を分子レベルで理解することを目的とする。さらに、ASPDが選択的にターゲット分子に結合する構造基盤を解明し、細胞死の阻止を目指す。 初年度は、固体NMRによりASPDの構造を決定し、論文として報告した(JACS in press)。また、その過程で、新しい線維の構造を発見し報告した(NSMB in press)。また、ターゲット分子の構造モデルを構築し、ASPDに結合し、ターゲットとの相互作用を阻止するペプチドの同定に成功した(論文投稿中)。ASPDがターゲット分子に結合した下流については、ASPD投与によりタウのリン酸化が起きるだけではなく、細胞内よりタウが失われることを見出した。 上記のとおり、順調に予定した実験計画を進めることが出来た。特に、ASPD及び線維の新たな構造の論文については、AlzForumで記事として大きく取り上げられた。http://www.alzforum.org/news/research-news/danger-s-bends-new-structure-av42-fibrils-comes-view
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
設定した課題の内、1については、予想以上の進展があり、ASPDの構造論文の1報目を順調に報告出来た上に、全く予想外のこととして、アミロイドの42残基のものだけで構築が可能なトリプルβシートと名付けた新たな線維の構造を発見し、それについて、Nat Str Mol Biolに報告することが出来た。これは、これまでアミロイドの42残基のもの(疾患初期にある)と40残基のもの(正常でも多い)の違いについて初めて物質的な根拠を与える研究である。これは、我々が培ったアミロイドの合成精製技術によるもので、今後NMRを使ったアミロイドの品質管理という新たな可能性を拓いた。構造解析用のASPDの品質は明治大学佐藤道夫先生に依頼した。 課題2については、予定どおり順調にペプチドを同定することに成功した。この過程で全く新たなASPD調製方法を発見。これが次の課題である、なぜ脳内でASPDが形成されるのかという課題への手がかりとなることがわかった。そのために、今後、5xFADマウスなどを解析しASPDが脳内に存在するかどうか検証する。存在しない場合は新たにマウスモデルの構築を目指すこととする。 課題3については、ASPD発見の時に見出したタウリン酸化酵素がASPDにより活性化することが改めて確認出来ただけではなく、タウ自体に影響を与えること、それがターゲット分子の機能阻害によることを複数の証拠により証明した。タウとASPDが繋がったことは大きい。 上記を総合すると、今年は当初の計画以上に新たな進展があり、次の展開に繋がった。
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Strategy for Future Research Activity |
ASPD及び線維の構造については、今後、特に患者脳に実際に存在するものとの構造比較を中心に行う予定である。ASPDについては、大腸菌により高純度のアミロイドを調製することに成功したので、固体NMRだけではなく溶液NMRによる構造解析を実施する予定である。 ASPDとターゲットの相互作用部位については、ペプチドを用いて絞り込みを行い、さらに、相互作用部位に変異体を導入したターゲット分子を使って、相互作用がどうなるかを検証していく。 下流については、ASPDからタウまでのシグナルを全て明らかにすることを目指す。さらに、ASPDがどうやって細胞内で作られ、それが細胞外にどうやって運ばれているかについても研究を展開する予定である。
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Causes of Carryover |
26年度購入予定をしていた凍結乾燥機(100万円相当)が、今あるものの修理で対応が出来たため不要になった。また、安定同位体標識アミロイドβの合成費用(120万円相当)については、共同研究者の大学で調製したため今回は不要になった。上記については、本年度予定が早く進んだことから、計画を早めて、ASPD形成のモデル動物の確立と解析費用として用いる予定である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度の計画により、試験管レベルでのASPDの解析が順調に進んだため、動物モデルの実験を追加することが可能となった。そのため、5xFADモデルマウスを海外より導入し、その解析を行う必要として使用する予定である。
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Research Products
(6 results)
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[Journal Article] Yiling Xiao,Buyong Ma,Dan McElheny,Sudhakar Parthasarathy,Fei Long,Minako Hoshi, Ruth Nussinov & *Yoshitaka Ishii2015
Author(s)
Yiling Xiao,Buyong Ma,Dan McElheny,Sudhakar Parthasarathy,Fei Long,Minako Hoshi, Ruth Nussinov and *Yoshitaka Ishii
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Journal Title
Nature structural&molecular biology
Volume: **
Pages: **
Peer Reviewed
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