2015 Fiscal Year Annual Research Report
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26293102
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
川口 寧 東京大学, 医科学研究所, 教授 (60292984)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | HSV / ICP0 / RanBP10 |
Outline of Annual Research Achievements |
単純ヘルペスウイルス(HSV)は、約80種類と多くのウイルス因子をコードしている。これらのウイルス因子機能の総和として引き起こされるHSVの増殖や病態発現のメカニズムを解明するためには、全てのウイルス因子の機能を統一的に解析し、それらの解析で得られる知見を体系的に統合し、理解することが必須である。本研究課題では、全てのHSVウイルス因子の機能発現機構の統合的理解を最終目標とし、その第一歩として、申請者が独自に構築してきた技術基盤を利用したHSVウイルス因子の多因子統一解析システムを構築することを目的とする。本年度は、ユビキチンリガーゼ活性を有し,ウイルスの複製,遺伝子発現,抗ウイルス活性の抑制能に関わる重要な多機能ウイルス因子ICP0に焦点を当てた。ICP0と相互作用する宿主転写因子としてRanBP10を新たに同定した。RanBP10発現抑制および欠損時,ICP0欠損時と同様にHSV-1の増殖性の低下,様々なウイルス遺伝子の転写および蛋白質発現の低下,HSV-1ゲノムのプロモーター領域におけるhistone H3 occupancyの増加が認められた。また,これらの表現型はICP0欠損ウイルス感染時に野生型感染時と比較して極めて顕著だった。さらに,レポーター遺伝子アッセイにおいてRanBP10はHSV-1ゲノムのプロモーター領域に対するICP0の転写活性能を著しく増強させた。本解析より,RanBP10はICP0と同様に,HSV-1ゲノムのクロマチン構造をリモデリングすることで遺伝子発現を活性化し,効率的なHSV-1増殖に関与することが明らかとなった。また興味深いことに,本作用はICP0欠損時に著しく増強されたこと,RanBP10がICP0の転写活性能を増強したことから,RanBP10はICP0と協調して働いているということが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
昨年度に引き続き、HSVウイルス因子と相互作用する宿主因子を同定し、その生物学的意義を明らかにした。また、これらの知見をウイルス学において評価の高い国際学術専門誌であるJournal of Virologyに発表した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度と同様に研究を遂行する。
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Causes of Carryover |
研究が効率的に進行し、HSVと相互作用する数多くのウイルス因子や宿主細胞因子を同定できたため、その生物学意義の解析を加えて行う必要になったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
物品費、旅費、その他(論文投稿関連費)として使用予定。
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Research Products
(6 results)