2015 Fiscal Year Annual Research Report
RNAセンサーを起点とした抗ウイルス自然免疫応答制御メカニズムの解析
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26293107
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
河合 太郎 奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 准教授 (50456935)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 自然免疫 / ウイルス感染 / シグナル伝達 / サイトカイン |
Outline of Annual Research Achievements |
ウイルスが感染すると生体はI型インターフェロンや炎症性サイトカイン等を産生することでウイルス増殖を抑制するとともに、ウイルスに対する獲得免疫系を成立させ感染防御を行う。ウイルスRNAを認識する自然免疫センサーとしてRIG-I-like receptors (RLRs)が知られている。我々はこれまで、抗ウイルス免疫応答を制御する分子としてRBIF-1(Mex3c)の同定を行い、Mex3cがRLRの一つRIG-Iと相互作用しRIG-IのK63型ユビキチン化修飾を施すユビキチンリガーゼとして機能することを見いだした。この修飾は、下流シグナル伝達経路活性化に必須であった。細胞内において、Mex3cはストレス顆粒と呼ばれる細胞質内顆粒にウイルス感染後凝集し、この顆粒内においてウイルスRNAと結合すること、さらにRIG-Iも同顆粒に凝集していた。今年度、ストレス顆粒に局在し抗ウイルス免疫応答を誘導する新たな自然免疫制御因子としてRNA結合タンパク質HuRを同定し解析を行った。ゲノム編集技術を用いてHuR欠損マクロファージ細胞株を樹立し解析したところ、ウイルスRNA刺激やRNA型ウイルス感染後のI型インターフェロンや炎症性サイトカインの産生が欠損細胞で減少していた。このことから、HuRは抗ウイルス応答誘導に関わる新たな制御因子であることが示唆された。また、RLRファミリーのMDA5を介する抗ウイルス自然免疫応答を制御する因子として低分子量Gタンパク質Arl5Bの同定を行った。Arl5BがMDA5と複合体を形成すること、これによりMDA5とウイルスRNAの結合が阻害されることを見いだした。また、Arl5B欠損マウスを樹立し、このマウス由来の細胞ではウイルスに対するサイトカイン産生が上昇していることが分かった。これらのことからArl5BがMDA5の機能を負に制御していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Mex3c欠損細胞を用いて、ウイルスに対する自然免疫応答に対する役割を明らかにすることができた。また、ウイルス感染察知の場としてのストレス顆粒の役割に着目し、HuRがストレス顆粒から誘導されるI型インターフェロン産生誘導に関与していることを示唆する結果を得ることができた。現在、ゲノム編集技術により、HuRを欠損するマクロファージ細胞株や繊維芽細胞株等の樹立に成功しており、今後これらを用いてさらに解析可能な状況にある。また、HuRはRNA結合タンパク質でありmRNAの安定性制御に関与していることから、HuR欠損細胞と発現細胞におけるmRNAの発現の差をマイクロアレイにより解析し、HuRの標的となるmRNAの候補の抽出を行った。抽出した候補分子に関しても、ノックダウンや欠損細胞株の樹立を行っており、HuRを介する抗ウイルス応答におけるこれら標的分子の役割について解析を開始している。また、MDA5の活性を負に制御する因子としてArl5Bの同定を行い、生体レベルでも実際にMDA5を介する自然免疫応答を負に制御していることを示すことができた。さらに、抗ウイルス応答制御に関与する分子として以前同定を行ったPIKfyveに関しても、マクロファージやT細胞特異的に欠損するマウスの樹立に成功しており、既に解析を開始している。以上のことから、おおむね順調に研究が進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
ストレス顆粒の役割に着目し、RIG-IとMex3cの細胞内での挙動を可視化技術により明らかにする。また、新たに見いだしたHuRに関しても同様に細胞内挙動を中心とした細胞生物学的解析を行う。HuRに関しては既に樹立しているHuR欠損細胞を用いてウイルス感染後のサイトカイン産生やシグナル伝達分子の活性化等について詳しく調べる。また、HuR欠損細胞と発現細胞間で遺伝子発現プロファイルを比較し、HuR欠損細胞で減少している遺伝子の抽出を行った。それら候補遺伝子をノックダウンした細胞あるいは欠損株を複数既に樹立しており、今年度はこれら細胞における抗ウイルス応答について検討を行う。また、これら候補mRNAとHuRが結合するかin vitroで確認するとともにHuRとの結合領域の同定を目指す。これらを通して、ウイルスに対する自然免疫制御におけるHuRの役割を明らかにしていく。また、樹立に成功している組織特異的PIKfyve欠損マウスに関しては、ウイルスに対するサイトカイン産生やT細胞応答等を調べることでウイルスに対する生体防御における役割を生体レベルで明らかにしていく。
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Causes of Carryover |
27年度に、PIKfyve遺伝子欠損マウスを用いてウイルスに対する免疫応答の解析を行う予定であったが、マウス同士の掛け合わせの結果想定した数より少ないマウスが得られたため実験が遅延した。したがって、未使用額は解析に必要な試薬やキットの購入に充てることとしたい。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
野生型およびPIKfyve欠損マウスよりマクロファージと樹状細胞を調整し、ウイルス感染を模倣する人工核酸(RNA、DNA)で刺激を行い、その後のサイトカイン産生を定量PCRとELISA法で解析を行う。
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Research Products
(6 results)
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[Journal Article] IPS-1 differentially induces TRAIL, BCL2, BIRC3 and PRKCE in type I interferons-dependent and -independent anticancer activity.2015
Author(s)
Kumar S, Ingle H, Mishra S, Mahla RS, Kumar A, Kawai T, Akira S, Takaoka A, Raut AA, Kumar H.
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Journal Title
Cell Death Dis.
Volume: 6
Pages: e1758
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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