2015 Fiscal Year Annual Research Report
妊娠期の化学物質曝露による孫世代での体細胞突然変異の増加を誘導するエピ変異の探索
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26293154
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Research Institution | National Institute for Environmental Studies |
Principal Investigator |
野原 恵子 国立研究開発法人国立環境研究所, 環境健康研究センター, センター長 (50160271)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
畑田 出穂 群馬大学, 生体調節研究所, 教授 (50212147)
秦 健一郎 国立研究開発法人国立成育医療研究センター, 周産期病態研究部, 部長 (60360335)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 継世代影響 / 妊娠期曝露 / 無機ヒ素 / DNAメチル化 / miiRNA / 肝腫瘍 |
Outline of Annual Research Achievements |
C3Hマウスは雄が高齢期に一定の割合で肝腫瘍を自然発症する系統である。これまでの研究によって、妊娠中のC3Hマウス (F0)に無機ヒ素を投与することによって、子世代(F1)雄、および孫世代(F2)雄においても肝腫瘍が増加し、その増加に体細胞突然変異の増加が関与することが示唆された。そこで本研究では、F2肝臓での体細胞突然変異や肝腫瘍増加に関与するエピ変異の探索を目的とした。 1)妊娠期ヒ素曝露群F2肝臓のDNAメチル化変化: 対照群、ヒ素曝露群F2の肝腫瘍組織および正常肝組織のゲノムDNAについて、Reduced representation bisulfite sequencing (RRBS)法によってゲノムワイドなDNAメチル化解析を行った。取得された次世代シークエンスデータについて、統計ソフトのR上でmethylkitパッケージおよびedmrパッケージを用い、妊娠期ヒ素曝露によってF2でメチル化が変化したシトシン(DMC)および領域(DMR)を検出した。その中でも特に遺伝子発現の制御に重要と考えられる転写開始点±2000 bpの領域をLinux上でbed tools closestを用いて検出した。その結果、ヒ素曝露群F2の肝腫瘍で対照群肝腫瘍組織と比較して有意にメチル化が変化する領域を同定した。 2)妊娠期ヒ素曝露群F2肝臓のmiRNA解析: 昨年度のマイクロアレイの解析の結果、対照群正常肝組織と比較してヒ素曝露群F2正常肝組織でlet-7b, miR-29a, miR-122が増加していたためqPCRで確認をおこなったところ、miR-29aの増加が確認された。またターゲットの可能性が示唆されているG6pcの発現が減少していることがわかった。
研究協力者:鈴木武博、岡村和幸、松下隼也(国立環境研究所)、中林一彦(国立成育医療研究センター)、森田純代、堀居拓郎(群馬大学)
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画した次世代シークエンス解析やmiRNAの発現解析が予定通り進行した。
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Strategy for Future Research Activity |
1)妊娠期ヒ素曝露群F2肝臓のDNAメチル化変化: 妊娠期ヒ素曝露群F2の正常肝組織および腫瘍組織で、対照群と比較してTSS近傍等でDNAメチル化が変化し、それに対応した遺伝子発現変化がみられる領域(DMR)を明らかにする。遺伝子発現変化とDMRのメチル化変化との対応をマウス肝がん細胞株の5aza-dC処理等により検討し、遺伝子発現変化と対応するDMRについては体細胞突然変異の増加や肝腫瘍増加との関係について、文献検索や細胞株での実験で検討する。 2)妊娠期ヒ素曝露群F2肝臓のmiRNA解析: G6apcの減少が肝がんの発症に関係しているという報告を鑑み、G6apcがmiR-29aのターゲットである可能性を検証する。方法としては以下の2つを用いる。1) 肝臓の培養細胞にmiR-29を導入し、G6apcの発現を定量する。2) G6apcの3'UTRをレポーターにつなげたplasmidとmiR-29を細胞に導入してレポーター活性に影響するかを検討する。
以上の研究によって、ヒ素曝露群F2肝臓の体細胞突然変異や肝腫瘍増加の関与するDNAメチル化やmiRNAを明らかにする。
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Causes of Carryover |
予定していた次世代シークエンスまでは年度内に完了したが、結果が得られたのが年度末となってしまった。そのためにシークエンスデータを基にした詳細な解析の一部に関する外注と、次年度のDNAメチル化変化等に関する実験的予備検討等が行えなえず、外注費と人件費等は次年度使用とした。また当初予定した国際学会での発表も、次年度とした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
DNAメチル化変化領域やmiRNA変化に関するマウス肝臓組織や細胞株での解析、人件費、および成果発表等の費用として使用。
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Research Products
(6 results)